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小児の単心室症 自身の幹細胞で心筋再生 岡山大病院 1月から臨床研究

王英正教授

単心室症患者の再生治療のイメージ図

 岡山大病院新医療研究開発センター・再生医療部門の王英正教授(循環器内科学)らの研究グループは、生まれつき心室に異常がある単心室症の子どもを対象にした再生医療の臨床研究を1月から始める。患者自身の心臓組織から取り出した幹細胞を培養して心筋に戻し、心機能強化を図る。心臓幹細胞を活用した小児への治療は世界初の試みという。

 外科手術と併用生存率向上 移植機会増に期待

 脳死臓器提供の年齢制限を撤廃した改正臓器移植法の全面施行(7月)で、従来は海外での移植に頼らざるを得なかった小児の心臓移植への道は開かれたが、いまだに18歳未満の脳死ドナーは現れていない。今回の再生治療と外科手術の組み合わせで患者の生存率が高まり、根治的な治療である移植を受ける機会が増すことが期待される。

 臨床研究は同病院の佐野俊二心臓血管外科教授、大月審一小児循環器科教授らと共同で、単心室症の乳幼児7人に実施。肺への血流を増やすシャント術時に採取した心臓組織(約100ミリグラム)から、自己複製能力を持つ幹細胞を取り出して培養する。

 術後1カ月で行う心臓カテーテル検査の際、冠動脈中に培養した幹細胞を注入して自家移植し心筋を強化、血液を送り出す機能を高める。さらに3カ月後、カテーテル再検査時に心臓のポンプ機能の増強や安全性などを確認する。

 研究で高い安全性や効果が認められれば、治療の有無で患者を比較する第2期の臨床研究を国に申請する方針。

 王教授は「外科手術が成功しても再発したり、心臓移植を受けられずに亡くなってしまう患者さんも多い。早期に治療法を確立させたい」としている。

 単心室症 心臓にある左と右の二つの心室のいずれかが非常に小さいか、全くない先天的な疾患で、左心室に多くみられる。右室は肺へ、左室は全身へ血液を送るポンプの役割を果たしているため、機能が弱ければ心不全などに陥る危険性が高い。必要に応じて肺動脈の血流を増やす外科手術などで治療する。国内では15万人に1人の割合で発症するという。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2010年12月28日 更新)

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