文字 
  • ホーム
  • 岡山のニュース
  • 腹膜障害に再生医療 岡山大・喜多村助教が研究 透析患者QOL向上 2年後臨床目指す

腹膜障害に再生医療 岡山大・喜多村助教が研究 透析患者QOL向上 2年後臨床目指す

喜多村真治助教

 岡山大病院腎臓・糖尿病・内分泌内科の喜多村真治助教(腎臓内科)は、腹膜透析などで炎症などの障害が起きた腹膜の再生医療研究に取り組んでいる。腹腔(ふくくう)を覆う腹膜から優良な細胞を取り出し、培養後に自家移植して腹膜の機能を回復させる。マウスでの効果は確認済みで、2年後には米国企業と共同でヒトへの臨床研究実施を目指す。

 日本透析医学会によると2009年末の国内の透析患者は約29万人で、このうち腹膜透析患者は約1万人。腹膜透析は生活上の制限が少ない透析として注目されるが、7、8年で腹膜が硬化して腸と癒着し、血液透析へ移行しなければならないケースもある。

 透析患者にとって根本的な治療は腎移植しかないが、登録患者は1万2千人を超え、待機期間は平均約15年。今回の治療が実現すれば腹膜透析を続けながら長期間の待機も可能となり、「多くの患者のQOL(生活の質)向上につながる」と喜多村助教。

 研究では、腹膜透析患者から提供された腹膜中皮細胞から再生医療に有効とみられる優良な細胞と、移植に適さない細胞をそれぞれ2〜3週間培養。腹膜をガーゼでこすって腹膜炎を起こしたマウス各3匹に移植した。

 2週間後、移植に適さない細胞を植えたマウスは癒着部位が2、3カ所増えるなどしたのに対し、優良な細胞を植えたマウスは癒着が治癒し、腹膜の機能が回復していた。

 喜多村助教によると、治療は腹膜透析患者だけでなく、腹部の手術後に起こる癒着防止にも活用できるという。「患者自身の細胞を移植するため、臨床研究や臨床現場での応用リスクは低い」とし、事前に優良な細胞を保存し、軽度の癒着が起きた時などに培養して移植する「細胞バンク構想」も計画している。

 腹膜透析 腎不全患者が行う透析のうち、週2、3回通院して1回4〜5時間、専用の機械で血液を浄化する「血液透析」に対し、腹膜のろ過機能を使う「腹膜透析」は1日4回ほど自分で透析液を交換する。腹膜内部に埋め込んだ細い管を通して腹腔内に透析液を入れ、余分な水分などを排出。月1、2回の通院が必要だが、自分で容易にでき、毎日透析するため血液透析よりも食事など生活上の制約が少ない。細い管で体外とつながるため、腹膜炎などの感染症に注意が必要。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2011年01月31日 更新)

カテゴリー

ページトップへ

ページトップへ