心臓病 津山中央病院 多い高齢患者 年間手術60例超 チーム医療で24時間対応
津山、美作、真庭市などはもとより、兵庫県の一部もカバーする医療拠点・津山中央病院。岡山県北部で唯一の救命救急センターがあり、致死率の高い心臓病治療にも、チーム医療で24時間対応している。
症状
胸が締め付けられる▽左肩が痛む▽冷や汗が出る―などの症状を感じたら、虚血性心疾患が疑われる。冠動脈(心臓を動かす心筋に酸素と栄養を送る動脈)が狭くなる狭心症、血管が詰まって心筋が壊死(えし)する心筋梗塞の恐れがある。
特に心筋梗塞は命にかかわり、早期治療が欠かせない。ところが同病院では、基礎疾患が多く動脈硬化の進行した高齢患者が多い上、病院まで遠く時間がかかる地域も少なくない。岡岳文循環器科部長は「高齢患者の中には、はっきりとした胸痛がないケースもある。異常を感じたら我慢せず、早急に受診してほしい」と呼び掛ける。
初期対応
急患は24時間対応で、CCU(冠疾患集中治療室)2床、ICU(集中治療室)6床など計20床を備える救命救急センターに運ばれる。直ちに心電図、血液検査、超音波(エコー)検査などを実施。血管造影検査で、狭くなったり詰まったりした箇所を突き止める。
心カテーテル治療
心筋梗塞、狭心症患者の心カテーテル治療は、循環器科の医師7人(非常勤2人含む)のうち吉川昌樹部長ら5人が行う。脚の付け根や手首の動脈からカテーテルという細い管(直径約2ミリ)を挿入し、冠動脈まで進める。病変部にガイドワイヤという細い針金を通過させ、風船を膨らませ、血流を確保するステント(金網状の筒)を留置する。
2010年は、270人に治療を行った。治療時間は1時間前後で、狭心症患者は2、3日、心筋梗塞では9日程度で退院できる。吉川部長は「カテーテル治療は迅速にでき、体への負担も軽い。しかし、病変部が冠動脈の入り口部や何カ所にも及ぶ場合などは外科手術になる」と話す。
バイパス手術
冠動脈病変がカテーテル治療に適さない場合、冠動脈バイパス手術となる。全身麻酔をかけ、胸を25センチほど切開。胸骨の裏側から動脈を、太ももから静脈を採取し、病変部を迂回(うかい)して性状の良い血管につなぎ、血流を回復させる。
10年のバイパス手術は27例で全て、心臓を動かしたまま行うオフポンプ手術だった。拍動する心臓の血管を1ミリ間隔で縫う技術が必要で、腕の高さを物語る。「人工心肺装置を使うのに比べ、脳梗塞などの合併症が起きる危険性が低く、体の回復も早い」と心臓血管外科の松本三明主任部長。バイパス手術は07年に95歳女性を成功させるなど、高齢患者の割合は高いが、手術時間は4時間前後、平均在院日数は16日。
弁膜症手術
10年の心臓手術は計62例で、心臓血管外科(非常勤1人含め医師3人)の松本主任部長が執刀した。心臓内の血液の流れを調節する弁が狭くなったり、閉鎖が不完全になり血液が逆流する弁膜症手術は22例。このうち僧帽弁を支えるひも状の腱索(けんさく)が切れた場合に人工腱索に替えたり、伸びきった弁を切除して元の形に整えたりする弁形成術は8例。形成術は難しいが、血栓のできる心配などが少なく、術後のQOL(生活の質)が高い。
胸部大血管手術
心臓から血液を全身へ送り出す大動脈の一部がこぶ状に膨れる胸部大動脈瘤(りゅう)、3層構造の血管の膜同士がはがれる胸部大動脈解離の手術は、それぞれ5、7例。血管が破れると出血死するため、病変部を切除し人工血管を付けた。腹部大動脈瘤手術では、松本主任部長が考案した約10センチの小切開手術も行う。
10年夏から、県北部では初の心臓リハビリテーションを開始。岡部長は「心臓病患者に運動療法、食事、服薬指導など続け、早期の離床、社会復帰に効果を挙げている」と語る。
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津山中央病院
住所 〒708―0841 津山市川崎1756
電話 0868(21)8111
メールアドレス soumu@tch.or.jp
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。
症状
胸が締め付けられる▽左肩が痛む▽冷や汗が出る―などの症状を感じたら、虚血性心疾患が疑われる。冠動脈(心臓を動かす心筋に酸素と栄養を送る動脈)が狭くなる狭心症、血管が詰まって心筋が壊死(えし)する心筋梗塞の恐れがある。
特に心筋梗塞は命にかかわり、早期治療が欠かせない。ところが同病院では、基礎疾患が多く動脈硬化の進行した高齢患者が多い上、病院まで遠く時間がかかる地域も少なくない。岡岳文循環器科部長は「高齢患者の中には、はっきりとした胸痛がないケースもある。異常を感じたら我慢せず、早急に受診してほしい」と呼び掛ける。
初期対応
急患は24時間対応で、CCU(冠疾患集中治療室)2床、ICU(集中治療室)6床など計20床を備える救命救急センターに運ばれる。直ちに心電図、血液検査、超音波(エコー)検査などを実施。血管造影検査で、狭くなったり詰まったりした箇所を突き止める。
心カテーテル治療
心筋梗塞、狭心症患者の心カテーテル治療は、循環器科の医師7人(非常勤2人含む)のうち吉川昌樹部長ら5人が行う。脚の付け根や手首の動脈からカテーテルという細い管(直径約2ミリ)を挿入し、冠動脈まで進める。病変部にガイドワイヤという細い針金を通過させ、風船を膨らませ、血流を確保するステント(金網状の筒)を留置する。
2010年は、270人に治療を行った。治療時間は1時間前後で、狭心症患者は2、3日、心筋梗塞では9日程度で退院できる。吉川部長は「カテーテル治療は迅速にでき、体への負担も軽い。しかし、病変部が冠動脈の入り口部や何カ所にも及ぶ場合などは外科手術になる」と話す。
バイパス手術
冠動脈病変がカテーテル治療に適さない場合、冠動脈バイパス手術となる。全身麻酔をかけ、胸を25センチほど切開。胸骨の裏側から動脈を、太ももから静脈を採取し、病変部を迂回(うかい)して性状の良い血管につなぎ、血流を回復させる。
10年のバイパス手術は27例で全て、心臓を動かしたまま行うオフポンプ手術だった。拍動する心臓の血管を1ミリ間隔で縫う技術が必要で、腕の高さを物語る。「人工心肺装置を使うのに比べ、脳梗塞などの合併症が起きる危険性が低く、体の回復も早い」と心臓血管外科の松本三明主任部長。バイパス手術は07年に95歳女性を成功させるなど、高齢患者の割合は高いが、手術時間は4時間前後、平均在院日数は16日。
弁膜症手術
10年の心臓手術は計62例で、心臓血管外科(非常勤1人含め医師3人)の松本主任部長が執刀した。心臓内の血液の流れを調節する弁が狭くなったり、閉鎖が不完全になり血液が逆流する弁膜症手術は22例。このうち僧帽弁を支えるひも状の腱索(けんさく)が切れた場合に人工腱索に替えたり、伸びきった弁を切除して元の形に整えたりする弁形成術は8例。形成術は難しいが、血栓のできる心配などが少なく、術後のQOL(生活の質)が高い。
胸部大血管手術
心臓から血液を全身へ送り出す大動脈の一部がこぶ状に膨れる胸部大動脈瘤(りゅう)、3層構造の血管の膜同士がはがれる胸部大動脈解離の手術は、それぞれ5、7例。血管が破れると出血死するため、病変部を切除し人工血管を付けた。腹部大動脈瘤手術では、松本主任部長が考案した約10センチの小切開手術も行う。
10年夏から、県北部では初の心臓リハビリテーションを開始。岡部長は「心臓病患者に運動療法、食事、服薬指導など続け、早期の離床、社会復帰に効果を挙げている」と語る。
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津山中央病院
住所 〒708―0841 津山市川崎1756
電話 0868(21)8111
メールアドレス soumu@tch.or.jp
(2011年02月21日 更新)
タグ:
心臓・血管