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(8)骨粗鬆症 川崎医大放射線医学(核医学)教授 曽根照喜

骨粗鬆症による脊椎圧迫骨折のエックス線写真(矢印部分が骨折を起こした椎体)。圧迫骨折が多発すると、治癒した後も動作が制限されたり、さまざまな内臓障害を引き起こしたりする

骨粗鬆症領域の骨量を示す頻度

骨量の加齢変化

 骨粗鬆症(こつそしょうしょう)とは、長年の生活習慣や体質などが原因で骨の量が減って骨の内部がスカスカになり、骨折を起こしやすくなる病気です。

 骨粗鬆症になっても、最初は自覚症状はなく、徐々に進行し、腰や背中に痛みが生じて病院を受診すると見つかることがほとんどです。さらに進むと、背中や腰の激しい痛みで寝込んでしまったり、少し転んだだけで手首や足の付け根を骨折するようになります。

 ひどくなると、背中が大きく曲がって、身長も縮み、日常生活の動作にも不自由が目立つようになります。寝たきりの原因となる場合もあります。また、背中が曲がると胸やおなかの内臓を圧迫するため、呼吸や循環の働きが弱められ、逆流性食道炎といった消化器の病気も起こしやすくなります。

 骨は硬いので、一度作られると変化しないように見えますが、実際は絶えず新陳代謝をし、古い骨が壊されて新しい骨に作り変えられています。そうすることによって、丈夫でしなやかな骨が保たれているのです。ところが、骨のもとになるカルシウムの摂取が不足したり、身体が老化してくると、骨を作る量よりも骨を壊す量の方が多くなります。

 女性ホルモンは骨の新陳代謝を保つのに大切な役割を持っており、閉経によってその分泌が減ると、新陳代謝のバランスが崩れ、骨を壊す量の方が多くなります。このため、閉経後の女性では骨量が減少しやすく、さらに、男性と比べて女性の方がもともと骨が細いため、骨粗鬆症になりやすいのです=グラフ1参照。

 その他に日頃の運動不足やカルシウムの摂取不足、遺伝的な体質、骨の代謝に影響するような他の病気を持った人は、骨粗鬆症にかかりやすくなります。

 骨粗鬆症にならないようにするには、他の生活習慣病と同様に予防や早期発見が最も効果的です。

 早期の発見には骨の量を測る検査(骨密度測定)が中心となります。測定機器には目的に応じていろいろな種類がありますが、いずれも苦痛を伴わず、短時間で安全に検査できます。骨の量は20歳ごろをピークに、年を取るごとに少しずつ減っていきます=グラフ2参照。ピークの値が低く、加齢による減少が大きい場合は、ある年齢になると骨粗鬆症の領域にまで骨量が低下します。

 骨粗鬆症の診断では、骨密度測定の他に、骨折の有無を調べたり、他の病気と区別するために、エックス線検査、血液検査、尿検査などが必要に応じて行われます。骨粗鬆症には生活習慣や体質、既往歴なども関連しますので、問診も重要な診断の手がかりとなります。

 骨粗鬆症の予防や治療で大切なのは、日常生活の中で骨量を増やす努力をすることです。何年もかかって減ってきた骨ですから、一度に増やすことは困難です。文字通りこつこつとした努力の積み重ねが必要になります。

 初期の骨量減少の場合は「食事(カルシウムの摂取)」や「運動」に注意することで骨量の維持や増加が期待できます。

 さらに病気が進むと薬物療法を始めます。骨粗鬆症の治療薬には骨を壊すのを抑えたり骨を作るのを助けたりする作用があり、骨量の増加効果を発揮します。その場合でも食事や運動を無視していたのでは薬の効果が十分発揮されません。

 最近では多くの種類の薬が利用できるようになってきており、年齢や症状の進み具合により選択されます。腰背痛があるときは、飲み薬や注射によって痛みを軽くします。

 骨粗鬆症は昔からよく見られた病気ですが、最近、高齢化社会となって注目を集めるようになりました。年を取っても元気に体を動かし、いきいきとした生活を送ることを誰しも望みます。そのためには若い頃から骨粗鬆症に気をつけることが大切といえます。

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そね・てるき 1983年京都大医学部卒。米国ベイラー医科大留学を経て、93年京都大大学院医学研究科博士課程修了。94年川崎医大放射線医学(核医学)講師、99年同助教授、2009年から現職。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2011年03月21日 更新)

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