文字 

(上)痔核 チクバ病院・嶋村廣視副院長 肛門疾患の50〜60%占める 風呂は一番の予防・治療法  

【図1】肛門の解剖と痔疾患

【図2】内痔核の進行度分類【図3】内痔核の進行度と治療法

しまむら・ひろし 金光学園高、岡山大医学部卒。福山市民病院、水島第一病院、岡山大付属病院などを経て1997年から現職。笠岡市出身。49歳。

 おしりの病気(肛門疾患)の症状、治療、予防法についてチクバ外科・胃腸科・肛門科病院(倉敷市林)の医師に寄稿してもらう。

痔核とは

 痔(じ)には大きく分けて、痔核(イボ痔)裂肛(キレ痔)痔瘻(じろう)(アナ痔)の3種類があります。初回は肛門疾患の50〜60%を占める痔核についてです=図1参照。

 痔核とは肛門部がイボ状に隆起したもので、豆粒くらいの小さいものから脱肛の激しいものは直径数センチくらいまで大きく腫れるものまでさまざまです。

 排便時の過度のいきみなどにより肛門管の粘膜下にある組織(肛門クッション)が緩んで脱出することが主な原因と言われています。

 発生する場所により歯状線(直腸と肛門の境界)を境に内側にできる内痔核と外側にできる外痔核に分けることができます。両方同時に存在することもよくあります。

 直腸の下部には血管(上痔動脈)が3本走っています(腹側を時計の12時方向とすると3、7、11時の方向)。内痔核はその3カ所にできやすくなっています。

 症状としては内痔核は血管に富んでおり、出血しやすいのが特徴です。粘膜には痛覚がないため、通常痛みはみられません。大きくなるに従って中から出てくる(脱出)度合いが強くなってきます。また、脱出を繰り返していた内痔核が戻らなくなり、激しい痛みを伴うことがあります(かんとん痔核、または脱肛)。

 外痔核は血栓(血のかたまり)を作ると短時間で腫れ、痛みを伴うことが多いものですが、数日たつと痛みは軽快し、脱出症状だけが残ります。

 痔核の重症度を表すには、脱出の度合いを元にしたI〜IV度分類=図2参照=を用います。この分類と出血などの症状を加味して治療法を決めていきます=図3参照。

治療法 

 治療法は次のようなものです。

 (1)保存的治療=排便の調整、入浴、長時間坐位(ざい)を避けるなど生活習慣の改善(後で述べる「おしりの健康7カ条」参照)▽内服薬、軟膏(なんこう)、注入軟膏、坐薬などの薬物療法。

 (2)硬化療法(ALTA療法)=ALTA(硫酸アルミニウムカリウム・タンニン酸)と呼ばれる硬化剤を痔核に注射し、硬化、収縮させます。出血に対してはかなり有効ですが、施行できるのは専門医に限られています。

 (3)ゴム輪結紮(けっさつ)法=内痔核の根部を専用の器具で結紮(ゴム輪をかける)します。

 (4)手術療法(結紮切除術)=痔核部分を切除、根部を結紮します。さまざまな状態に対応でき、一番確実な方法です。

 (5)PPH(Procedure for Prolapse and Hemorrhoids)=自動環状縫合器で直腸下部の粘膜を環状に切除し、脱出痔核をつり上げ固定します。

 治療に関しては一つの治療法で全ての痔核が治療できるわけではなく、それぞれの治療法の特徴を考慮した上で、患者さんの症状に最も合ったものを選択するようにしています。

 最後に当院でお勧めしている「おしりの健康7カ条」を挙げておきます。

 1、毎日お風呂に入る=お風呂に入ると体が温まり血行がよくなります。また清潔にもなります。お風呂は痔の一番の予防・治療法です。

 2、おしりをきれいに=おしりを汚しておくと、かゆくなったり炎症を起こします。排便のあとは、できるだけきれいにしましょう。

 3、便秘・下痢に注意=便秘すると硬い便がたまって、肛門を傷つけることがあります。また排便のとき強くいきむため、肛門付近のうっ血をきたします。下痢は肛門を刺激し不潔にもなり、細菌感染を起こしやすくします。

 4、トイレで強くいきまない=排便のとき強くいきむと、肛門のうっ血や出血をきたすことがあります。また力仕事とか過激なスポーツなども、急に肛門の負担がかかるのであまりよくありません。

 5、腰を冷やさない=腰を冷やすと肛門の血行が悪くなるのでよくありません。

 6、座りっ放しはよくない=座りっ放しや立ちっ放しでいると、肛門のうっ血をきたすことがあります。時々軽く体操をして、血行をよくしましょう。長時間のドライブは避けましょう。

 7、思いこみは禁物=肛門の病気は恥ずかしがらずに早めに診察を受けましょう。がんを痔と思い込んだり、簡単に治せる痔を長年悩んでいる方がよくみられます。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2011年03月21日 更新)

カテゴリー

ページトップへ

ページトップへ