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「NO濃度が細胞生死の鍵」特定 世界初の成果 上原岡山大大学院教授ら 脳梗塞新薬に期待

上原孝教授

 岡山大大学院医歯薬学総合研究科の上原孝教授(神経薬理学)らの研究グループは、体内で発生する一酸化窒素(NO)の濃度が、脳梗塞の発症時などに神経細胞の生死を決める一因となっていることを突き止めた。脳梗塞を悪化させない医薬品開発などにつながる世界初の成果として、米科学アカデミー紀要電子版に7日付で掲載された。

 NOは、体内で濃度が低ければ血圧調整や神経伝達などの役目を果たし、高濃度では侵入したバクテリアを殺す作用の一方、アルツハイマー病といった神経変性疾患を招くなど人体に悪影響を及ぼすことが知られている。

 グループは、特殊な分析装置でヒトの神経細胞内でNOが結合しているタンパク質を探索。がん抑制タンパク質「PTEN」が低濃度のNOと特異的に結合し、細胞を生存させる信号を送るリン酸化酵素「Akt」の働きを活発化させていることを突き止めた。上原教授は「NO濃度がAktの働きを促したり、止めたりするスイッチの役割を果たしている」と話す。

 マウス実験でも、脳梗塞を起こさせた20匹の脳を分析した結果、血管が詰まって神経細胞が完全に死んだ梗塞中心部のNO濃度が、梗塞が進みつつある治療可能な周辺部に比べ10〜100倍という高濃度になっていた。周辺部で活発化していたAktも、中心部ではほとんど検出されなかった。

 上原教授は、北海道大に在籍していた2008年から今回の研究に取り組んでおり、「一連の作用はがんの発症に深くかかわっている可能性も高く、がん治療薬開発につながるのではないか」としている。

ストレス防御の一端

 赤池孝章・熊本大大学院生命科学研究部教授(病態生化学)の話 身体がさまざまなストレスから身を守るメカニズムの一端を明らかにした素晴らしい研究成果。脳梗塞の予防、治療などへの早期の応用を期待したい。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2011年06月07日 更新)

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