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救急「観察カード」統一進む 岡山県内 搬送時に容体記入 将来は全域へ

県南東部の5消防本部で統一した観察カード

 救急隊員が患者搬送時に容体などを記入し、医師に引き継ぐ「観察カード」の統一が県内で進んでいる。以前は全14消防本部が異なる書式だったが、昨年4月までに県南東部と備中、美作の3地域に分かれ、それぞれのエリアごとに足並みをそろえた。治療に一刻を争う医療現場は「以前に比べ迅速で適切な初動対応につながっている」と評価。県は「将来的には県内全域で同一書式を目指す」という。

 観察カード(A4判)は患者の名前、年齢、持病といった基本情報に加え、搬送時の症状、疑われる疾患名などを記入。救急救命士による薬剤投与や気道確保の有無、外傷箇所を記す人体図、脳卒中の判定表などの記載欄も設けている。

 以前、カードは各消防本部ごとにあり、書式がばらばらで記入項目も異なっていた。消防の管轄を越えて患者搬送された場合、「分かりづらくて読み込むのに時間がかかる」「ミスを招きかねない」などの苦情が病院から相次いでいた。

 このため救急医療の関係機関でつくる「県メディカルコントロール協議会」で検討。2009年5月に岡山、玉野市など県南東部の5消防本部を皮切りに、同7月には津山、真庭など美作地域の3消防本部、10年4月に倉敷、総社、笠岡市など備中地域の6消防本部が、各エリアの実情に応じて統一カードを使い始めた。

 脳卒中など脳血管疾患は処置が遅れれば障害が残ったり、亡くなる可能性も高くなるという。岡山赤十字病院救急部長の實金健医師は統一効果について、「医療行為はこの2年で早くなった実感はある。重要なポイントを見落とす危険もなくなった」と指摘。岡山大病院の氏家良人救急部長は、今後の課題として「現場での迅速、的確な判断がとても大切。救急救命士らのさらなる質の向上も求められる」と話す。

 県消防保安課は「国は都道府県単位での統一指針を示している。より円滑な運用に向け、内容も検討しながら最終的には県内同一書式を目指したい」としている。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2011年06月21日 更新)

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