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岡山の病院で結核集団感染 60代男性2人発病 患者、職員33人陽性

結核の集団感染について説明する岡山市保健所の中瀬所長(左)ら=岡山市役所

 岡山市保健所は22日、同市北区の民間病院で、60代男性2人が結核を発病し、院内の患者や職員33人も集団感染した疑いがあると発表した。同日、厚生労働省に報告した。

 発病した2人は別の病院に転院して治療中だが重症ではないという。他の33人は30〜90代の男性26人、女性7人で、発病予防のため投薬を受けることを勧めている。

 同保健所によると、3月25日、病院が60代男性の発病を届け出。これを受け、同じ病棟の入退院患者や職員計78人の血液検査や胸部エックス線検査を行ったところ、別の60代男性が結核を発病しており、33人が陽性反応を示した。

 届け出のあった60代男性は、別の疾患で入院中の昨年10月、せきやたんの症状が現れたが、病院は肺炎と診断。たんの量が増えて3月に喀痰(かくたん)検査をするまで結核と分からず、同保健所は「診断の遅れが感染を広げた可能性がある」とみている。

 同保健所は再発防止を病院に指導するとともに、2人目の発病者との接触者にも対象を広げて調べている。市内の医療機関には結核の院内感染防止を文書で注意喚起する。

 岡山県内での結核の集団感染は2002年8月、倉敷市の高校で発生して以来。

「診断遅れ」で拡大か 半年前から疑われる症状

 岡山市北区の病院で発生した結核の集団感染。最初に発症したとみられる60代男性は症状が半年間も続きながら、詳しい検査がなされていなかった。「診断の遅れが感染拡大の一因」―。22日の会見で岡山市保健所がこう繰り返したように、「過去の病気」とみられがちな結核では医師側も患者を診る経験が乏しく、今回も認識の低さが露呈した形だ。

 岡山市保健所によると、この病院に入院中の男性は昨年10月、せきやたんを訴え、同病院はエックス線検査などから肺炎と診断、治療を続けてきた。しかし、症状は一進一退を繰り返し、今年3月になって喀痰(かくたん)検査を実施し、結核と判明したという。

 「結核と肺炎は症状が似ている上、併発することもある。昨年10月の時点で結核を発症していた可能性は否定できない」と中瀬克己所長。保健所では、男性と接触した同じ病棟の患者ら78人を調べたところ、1人の発症と33人の感染を確認。男性を確定診断した3月以前に、院内感染が広がっていたとの見方を強めている。

 なぜ、病院側は当初から結核を疑わなかったのか―。県健康づくり財団付属病院(岡山市)の西井研治院長は「若手を中心に結核を診断したことがない医師も多く、なかなか結核に意識が向きにくい」とその背景を推察する。

 さらに県健康推進課によると、県内で2009年に結核と診断された182人の調査で、初診から1カ月以上を要した「診断遅れ」の割合が33・0%(60人)。全国平均(20・4%)を大きく上回っており、「医療側の意識改革が急務」(同課)という。

 岡山市保健所は今後、医師らを対象にした研修会を通じ、早期発見への意識向上を図る方針だが、今回の診断遅れについては「現時点で(病院側に)聞いていない」としており、再発防止に向けた原因究明も急がれる。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2011年06月23日 更新)

タグ: 高齢者感染症

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