文字 

肝がん(岡山済生会総合病院) 治療費 制度知って賢く利用を 医療ソーシャルワーカー 井上美夕起さんに聞く

井上美夕起さん

肝がんの標準的な治療費(岡山済生会総合病院)

 治療法の選択に当たり、患者にとって心配なのは、予後とともに治療費の問題。できるだけ自己負担を抑えて納得できる治療を続けるにはどうすればよいのか。岡山済生会総合病院(岡山市北区伊福町)で医療ソーシャルワーカーを務める井上美夕起さん(医療福祉課長)にアドバイスをお願いした。

 同病院のクリニカルパス(標準的な診療計画表)に沿って入院治療の患者負担額を試算してもらうと、治療法と公的医療保険の一部負担割合の組み合わせで表上のようになった。3割負担なら、いずれの治療でも10万円を超える。

 強い味方になるのは高額療養費制度。支払い月額が所得階層によって定められた上限を超えた場合、保険者(協会けんぽや市町村の国民健康保険窓口など)へ申請すれば、超過分の払い戻しが受けられる=表下。70歳以上はさらに低い限度額が設定されている。

 通常、払い戻しまでに3カ月程度かかるが、井上さんは「入院の場合、限度額適用認定証をつくっておけば、病院窓口での支払いを上限額までで済ませることができます。手続きを知らない人も多いので、入院予約の際などに制度を紹介しています」と説明する。

 ただし、国保保険料の滞納や未納があると、認定証が交付されないことがある。井上さんは「ほかにも利用できる制度がある場合もあり、早めに相談することが大切です」と呼びかける。収入も資産も困窮しているケースでは、生活保護の認定を受ければ、治療費は全額公費負担になる。

 また、がんを取り除いた後、再発予防のためにインターフェロンやB型肝炎の核酸アナログ製剤治療を必要とする場合、国の肝炎総合対策による助成制度がある。昨年4月以降、自己負担は所得によって月額1万円と2万円の2段階になり、継続的に治療を受けやすくなった。

 一度の治療で根治すればよいが、肝がんは再発リスクが高い。治療後の通院検診や定期的な画像診断(CTやMRI)にも医療費がかかることを考慮し、制度を知って賢く利用したい。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2011年07月04日 更新)

カテゴリー

ページトップへ

ページトップへ