文字 
  • ホーム
  • 岡山のニュース
  • てんかん患者交通事故 不申告の背景に残る偏見 日本協会県支部・西本事務局長に聞く

てんかん患者交通事故 不申告の背景に残る偏見 日本協会県支部・西本事務局長に聞く

西本康裕事務局長

 4、5月に栃木県鹿沼市と福山市で登校中の児童の列に車が突っ込み、いずれの運転者にもてんかんの持病があったことを受け、日本てんかん協会県支部は病気への理解を深めてもらおうと17日、岡山市で講演会を開く。「主治医の診断を受け一定の条件をクリアすれば運転は問題ない」と訴える同支部の西本康裕事務局長(54)に、患者を取り巻く課題などを聞いた。

 ―2002年6月の改正道路交通法により、てんかん患者が自動車運転免許を取得できるようになった。免許の取得申請、更新時の条件は。

 「病気を申告した上で、過去2年間発作が起きていない▽過去2年間発作が寝ているときにしか起きていない▽過去1年間に意識障害を伴う発作が起きていない―といった主治医の診断書を提出し、公安委員会が判断する。条件を満たしていれば問題はない」

 ―今回、重大な事故が相次いだ。

 「てんかんの8割のタイプは主治医の診断を基にきちんと薬を飲んでいけば発作を抑えることができる。鹿沼、福山市の事故とも、運転者が免許の取得・更新時に持病を申告しておらず、過去にも発作が原因とみられる事故を起こしていたと聞いており、自己管理を怠った責任がある。視力の低下した人が眼鏡やコンタクトレンズを装着せずに運転するような無謀行為で、非常に残念だ」

 ―事故の背景にどういう問題があるのか。

 「てんかんに対する社会の偏見が依然として残っているためだと思う。ほとんどの患者は自己管理を徹底し、運転免許も取得している。しかし、就職する際や、採用後でも病気を打ち明けると職を失う事例は今もあり、そういった不安などから申告しない人がいる」

 ―県警によると、県内では今年6月末までに延べ480人が病気を申告して免許の取得申請や更新の手続きをしている。

 「鹿沼市の事故を受け警察庁は、患者が免許を取得・更新する際に病気をきちんと申告するよう、患者団体や日本医師会に協力を要請したが、申告しなかった場合の罰則規定はなく、効果は不透明。なかなか病気を明らかにしない人がおり、患者数は協会でも把握できないのが実情だ」

 ―講演会の目的は。

 「真面目に病気と向き合っている患者が、今回の事故の影響で世間から冷たい目で見られるようなことがあってはならない。県支部にも『報道で運転が不安になった』などと複数の相談があり、運転を控えている人もいると聞く。講演会を機会に社会の誤解を解くよう努め、声を上げられない多くの患者の不安を取り除きたい」
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2011年07月14日 更新)

タグ: 脳・神経

カテゴリー

ページトップへ

ページトップへ