文字 
  • ホーム
  • 岡山のニュース
  • くも膜下出血の対処法 突然の頭痛見逃さないで 脳神経センター大田記念病院・佐藤倫由副院長に聞く

くも膜下出血の対処法 突然の頭痛見逃さないで 脳神経センター大田記念病院・佐藤倫由副院長に聞く

さとう・みちよし 1991年、脳神経センター大田記念病院に赴任。2001年4月から同病院副院長。岡山大医学部卒。福山市木之庄町。

 くも膜下出血のため、37歳の若さで急逝したプロ野球・巨人の木村拓也コーチ。現役時代は長年、広島カープで活躍したこともあり、県内に大きな衝撃が広がった。発症まで予兆を察知しにくいとされる病にどう対処すればいいのか。予防・治療法などについて、脳神経外科医で、脳神経センター大田記念病院(福山市沖野上町)の佐藤倫由副院長(46)に聞いた。


 ―くも膜下出血が発症するメカニズムは。

 多くは頭の中に脳動脈 瘤 ( りゅう ) と呼ばれるこぶができ、それが徐々に膨らみ、破裂することで起きる。脳圧が高くなり、激しい頭痛と吐き気に襲われる。片頭痛のようにじわじわではなく、ハンマーで殴られたような突然の激しい痛みが特徴だ。重症の場合は意識がなくなり、そのまま死に至ることもある。

 ―死亡率が高く、働き盛り世代の患者も多い。

 頭の病気では最も死亡率が高く、初回の出血で3割程度の人が亡くなる。出血が軽く自分で病院を受診するケースもあるが、全体では発症した人の4割程度が亡くなる非常に重篤な病気だ。自覚症状がなく、こぶが破裂するまで前兆がないことも厄介だ。

 患者は40~50代が最も多く、若くて元気だった人が突然、亡くなってしまう。救命できても重い障害が残ることも少なくない。男性よりやや女性に多くみられる。

 ―治療法は。

 脳動脈瘤が破裂すると、24時間以内に再出血が起きる危険性が高いとされ、早急に破れたこぶを処置して止血しなければならない。開頭手術を行い、クリップでこぶの根元を挟む「クリッピング手術」や、カテーテルでプラチナ製のコイルをこぶに詰める血管内手術がある。脳ドックで未破裂状態で見つかった場合も手術法は同じだ。

 ―発症したときはどうすればいいか。

 くも膜下出血の危険信号である「突然の頭痛」を見逃さないでほしい。痛みを我慢しているうちにさらに大量出血し、意識不明になってしまってからでは手の施しようがない。脳動脈瘤の大きさや場所、出血量によって症状は異なるが、軽い出血であれば早期治療で社会復帰できることもある。

 ―どのように予防すればよいか。

 高血圧、喫煙、大量の飲酒は危険因子とされる。遺伝的な要素も否定できず、くも膜下出血を発症した親族がいる場合はさらに注意が必要だ。そのような家系では脳動脈瘤が発見される場合がやや多いといわれている。

 一方、脳ドックは早期発見、予防に有効だが、検査結果が大きなストレスとなる可能性も忘れないでほしい。こぶが見つかっても破裂する可能性が低く、手術しないケースも多い。そうすると「いつ破裂して死ぬか分からない」という恐怖が続くことになる。手術も100%成功の保証はなく、精神的に不安定になってしまう人もいる。

 くも膜下出血の発症率は1万人に1~3人とされる。脳ドックや手術を受けるかどうかは最終的に本人の判断に委ねられる。病気の正確な情報を基に総合的に考えてほしい。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2010年04月17日 更新)

タグ: 脳・神経

カテゴリー

ページトップへ

ページトップへ