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ドナーの肺、体外で維持 国内初導入へ準備  岡山大病院 状態整え移植機会増へ 

岡山大病院が動物の肺を使って改良した肺移植用の体外肺灌流装置(同大病院提供)

 岡山大病院(岡山市北区)は、ドナー(臓器提供者)から摘出した肺を専用装置につなぎ、体外で生存状態を維持する国内初の「体外肺灌流(循環)技術」導入へ準備を進めている。これまで「医学的な理由」で移植を見送られた肺も状態を整えることで使える可能性が高まり、移植機会の増加につながる。同大倫理委員会は26日、同技術や心停止移植の実施などを盛り込んだ「肺移植ガイドライン」の改定を承認した。

 本人意思が不明でも家族の承諾で脳死臓器提供を可能にした改正臓器移植法の全面施行(2010年7月)以来、脳死ドナーは急増し、約1年間で56人が現れた。しかし、肺移植を希望し日本臓器移植ネットワークに登録する人は150人(6月末現在)で、増え続ける患者へ十分に行き渡る状況にない。

 提供された肺も「医学的な理由」で移植を断念する場合がある。中にたんが詰まって空気が入らず機能が低下するなどしたケースでは体外肺灌流技術を用いて状態を回復させ、移植の可否を評価できるといい、岡山大病院は「多くの患者さんに機会を提供したい」と導入を決めた。

 同大病院の大藤剛宏肺移植チーフらが同大倫理委に申請した。大藤チーフはスウェーデンへの短期留学で技術を習得。07年から動物の肺で実験し、循環させる液体などの改良を重ねて臨床応用のめどがついたという。「年内にも脳死移植の際に活用したい」とする。

 一方、同技術が導入されれば、肺細胞のダメージなどから移植に適さないとして、国内では行われていない心停止肺移植も技術的に可能となる。大藤チーフは「実施準備は整ったが、現状では臓器を斡旋(あっせん)するシステムがなく、実現は困難。学会など関係者に働き掛けたい」としている。

 ガイドライン改定では、生体肺移植のドナーを2親等から3親等の血族まで拡大。臓器の大きさが合わずに移植機会が訪れない小児患者に対し、ドナーの肺下部の一部を使う区域移植なども盛り込んだ。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2011年07月27日 更新)

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