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大腸がん(チクバ外科・胃腸科・肛門科病院) 内視鏡診断と治療 気後れが手遅れ招く

がん早期発見の大切さを訴える瀧上院長

大腸の壁の構造

部位別の大腸がん外科手術症例数

 2010年、チクバ外科・胃腸科・肛門科病院(倉敷市林)での大腸内視鏡検査は5449例だった。前年より498例増え、06年と比べると947例多かった。便の中に混じった血液を検出する便潜血反応検査で陽性となり大腸内視鏡検査を受けた人もいるが、「当院の性格上、肛門からの出血を訴えられる方が多い」と瀧上隆夫院長は話す。

 瀧上院長は大腸内視鏡検査で約7万例の診断経験を持つ。ある40歳代の受診者は1回だけ肛門出血があり「痔じが悪くなった」と思って来院したが、内視鏡検査の結果、大腸の壁の固有筋層まで浸潤したS状結腸がん(進行がん)が見つかった。「病院に来てお尻を見せるのは誰しも恥ずかしい。でも、その気後れが手遅れを招く。お尻から血が出たら絶対に自己診断は危険」と強調する。

 10年、同病院での大腸内視鏡検査で83例に結腸がん(進行がん56例、早期がん27例)、64例に直腸がん(同59例、同5例)が見つかった。同病院は大腸・肛門疾患を中心とする消化器専門病院。S状結腸や直腸といった下部大腸の検査なら受診当日に診断がつく場合もあるという。

 内視鏡を使って良性ポリープや早期がんを切除する治療は10年、456例にポリペクトミー(ポリープの茎に金属製の輪をかけ、高周波電流を流して茎を焼き切る)、62例にEMR(内視鏡的粘膜切除術)を行った。

 内視鏡でのがん切除は、腫瘍径の大きさよりも、がんが大腸の壁=図1参照=に入り込んだ深さ(深達度)が重要なポイントになる。同病院での適応は、がんが粘膜の中にとどまっているものが基本という。

 同病院での大腸がん外科手術は、06年から10年までの5年間で416例(男性240例、女性176例)に行った。部位別では直腸が最も多く218例、以下、S状結腸84例、横行結腸41例、盲腸36例―などだった=図2参照。

 一般的に大腸がん外科手術で直腸を切除した場合、便をためたり押し出したりする能力が低下、排便回数が増えるなどの機能障害が起きる。「術後2、3年たてば治ってくる可能性は大いにある」と瀧上院長は言う。一方で「直腸がんの場合は手術をする、しないでQOL(生活の質)、ADL(日常生活動作)に大きな差が出る。切除できるものは体に負担をかけない内視鏡で取った方が絶対にいい」と、がん早期発見の大切さを訴える。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2011年08月01日 更新)

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