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”自家移植”肺の転移腫瘍でも成功 岡山大病院 子宮肉腫患者へ 体外で患部切除し戻す

病巣が肺に転移した患者の”自家移植”

大藤剛宏准教授

 岡山大病院(岡山市北区)の大藤剛宏呼吸器外科准教授は、悪性度の高い子宮平滑筋肉腫が左肺に転移し、従来の治療では全部摘出手術が必要な患者の肺を体外に取り出して、患部を切除、移植用の保存処理を行った後、正常な部分を体内に戻す“自家移植”手術に成功した。


 同大病院は昨年、原疾患が肺がんの男性患者に対し、同様の手術を世界で初めて成功させているが、病巣が転移した患者では初めて。

 手術は臓器提供者から摘出した肺を長時間保存する肺移植の技術を活用。肺活量の減少を最小限にとどめ、術後の呼吸不全を防ぎ、患者のQOL(生活の質)を向上させる治療法として注目を集めている。

 患者は近畿地方の30代女性。地元の病院で同肉腫の治療を受け、子宮の病巣は完全に除去されたが、肺への転移が判明して岡山大病院に転院した。病巣は左肺の上中部に大きく広がっており、当初は全摘を検討。しかし、検査で下葉の一部には転移していないことが分かり、自家移植を決定。8月上旬に手術した。

 大藤准教授らは、取り出した左肺に移植用の特殊な保存液を注入して冷却保存。病理検査で転移が認められなかった左肺の半分程度を切り離し、約2時間後に気管支や血管とつなぎ合わせた。

 患者は現在、集中治療室から一般病棟に移った。両肺を合わせた肺活量が50%を下回ると息切れなど日常生活に支障が出るが、女性は約70%を維持し、経過も良好という。

 大藤准教授によると、転移したがんなどへの応用も可能だが、原疾患が完全に治療され、他の臓器に転移がない場合にしか手術は適用できない。大藤准教授は「今後も患者さんのQOL向上に努めたい」としている。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2011年08月12日 更新)

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