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iPS細胞使いインスリン分泌 糖尿病治療へ 岡山大大学院 野口客員研究員取り組む

マウスの膵臓組織から作成したiPS細胞

野口洋文客員研究員

 体の組織や臓器に成長する能力がある人工多能性幹細胞(iPS細胞)から、血糖値を調整するインスリンを分泌する膵島(すいとう)細胞をつくり出す再生医療の研究に、岡山大大学院医歯薬学総合研究科の野口洋文・消化器外科学客員研究員が取り組んでいる。既にマウスでiPS細胞をつくり出し、膵島細胞への効率的な分化法を探索中。将来的にはヒトに応用して国民病である糖尿病の治療に役立てる。

 予備軍を含め、国内の推計患者数が2210万人(2007年)の糖尿病治療は、投薬による血糖のコントロールやインスリン注射などが主流。根本的な治療は、インスリンが分泌されない「1型糖尿病」を対象にドナー(臓器提供者)の臓器を移す「膵臓移植」や、膵島細胞を取り出して培養し、肝臓へ移す「膵島移植」がある。

 しかし、移植は他人の臓器や細胞が体内に入り、拒絶反応を起こすため、一生免疫抑制剤を飲まなければならないといったことが問題となっていた。

 野口客員研究員は、患者自身の膵臓から抽出した膵島細胞になる前の幹細胞や前駆細胞のほか、皮膚細胞などから作成するiPS細胞による再生医療ならば、国内では少ないドナーの出現を待つ必要がなく、拒絶反応もないことに着目。02年の米ハーバード大留学以降、京都大で経験を積み、米ベイラー大では教授として膵島細胞の再生研究を進めてきた。

 膵幹細胞や前駆細胞による研究では、分化誘導剤を用い、インスリンを分泌する細胞の作成に成功。ただ、治療に必要な量まで増殖させられず、07年からiPS細胞へ研究の軸足をシフトした。

 マウスの膵臓組織からiPS細胞を作成することには成功しており、現在は誘導剤の量や組み合わせなどを変えながら、効率的な分化方法を探っている。

 野口客員研究員は「分化法を確立させた後にヒトのiPS細胞を用いた研究に移行し、一刻も早く臨床応用できるよう努めたい」としている。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2011年10月04日 更新)

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