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「救急搬送困難」岡山県内で急増 新変異株で逼迫 1月最多186件

病院に患者を搬送する岡山市消防局の職員。新型コロナの感染拡大で「救急搬送困難事案」が増えている=10日

 患者の搬送先がすぐに決まらない「救急搬送困難事案」が岡山県内で急増している。新型コロナウイルスの新変異株・オミクロン株による流行「第6波」が急拡大した1月は186件。感染拡大前の20年同期の1・7倍で、この2年間で最も多かった。コロナの疑いがある患者の搬送に時間がかかったり、コロナ病床を確保した病院のマンパワーが不足し、一般患者の受け入れが難しくなったりしていることが要因とみられる。

 救急搬送困難事案は、救急隊員が医療機関に患者の受け入れを4回以上問い合わせた上で、現場到着から搬送開始までに30分以上かかったケースを指す。

 1月の内訳は、倉敷市消防局管内(同市、早島町、浅口市金光町地区)が59件、岡山市消防局管内(同市、吉備中央町)が54件、津山圏域消防組合管内(津山市、鏡野、美咲、久米南、奈義町)が30件―など。

 月別で見ると、20年1月以降、流行の波に合わせて増減を繰り返し、第4波の昨年5月に163件、第5波の同8月に141件生じた。今年1月は速いスピードで感染者が増加。冬場に救急搬送が多い傾向も重なり、これらをさらに上回った。

 特に月の後半から深刻化。1週間ごとに集計する岡山市消防局管内は24~30日に最多の22件に達した。2月に入っても同じ傾向が続き、31日~2月6日は19件発生した。

 この2週間の計41件のうち、コロナ陽性者と、37度以上の発熱や呼吸困難といった感染が疑われる患者が計16件あった。陽性者は保健所を介して受け入れる病院が決まるため、比較的スムーズに搬送されるが、疑いのある患者については救急隊が搬送先を調整することから同事案に多く含まれる。

 2月上旬には感染が疑われる高齢者が「処置中」や「ベッド満床」を理由に10カ所以上の医療機関から断られたという。残る25件は急病やけがの一般患者だった。

 倉敷市消防局管内も、1月は1週間ごと(月~日曜)の件数が右肩上がりで推移。主エリアの倉敷市でコロナの新規感染者がゼロの昨年12月27日~1月2日は7件だったが、感染者が45人の3~9日は10件、1441人の24~30日は17件に増えた。計59件のうち感染疑いの患者は5件。搬送先が決まらず現場で最長1時間52分待たされたという。

 患者の受け入れ先が決まるまでの照会件数が4回を超えたケースだけを見ても121件(前年同期比57%増)に上った。

 県内では第6波が猛威を振るい、2月に入って1日当たりの新規感染者は千人を上回り、感染確認は3万人を超えた。医療の逼迫(ひっぱく)度は示す病床使用率は43・0%(4日現在)。一般医療を制限しなければならなくなる「レベル3」の目安(50%)に迫る。

 両消防局は「感染拡大が続けば事態は深刻化する恐れがある」と危惧している。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2022年02月10日 更新)

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