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AEDの市民利用伸び悩み 岡山  市消防局、実習講座強化へ

AEDの使用法を学ぶ記者(左)

 岡山市内で市民によるAED(自動体外式除細動器)の利用が伸び悩んでいる。救急隊の到着前に応急処置したケースは2007年以降、年1〜4件で横ばい。全国では07年の486件から09年は1007件と倍増しており、同市消防局は市民対象のAED実習講座などを強化していく方針だ。

 AEDは重症の不整脈である心室細動が起きた心臓に電気刺激を与え、拍動を元に戻す装置。電極パッドを胸に張り付けて使う。機械が細動を感知した場合のみ作動するため、誤って健康な体に使っても電気は流れない。04年7月から医師や救急救命士以外も使えるようになった。

 市消防局のまとめでは、救急隊到着前のAEDによる応急処置件数は07年3件▽08年1件▽09、10年各4件―と推移し、11年も10月末現在で3件。うち医師や看護師といった医療従事者が4件、老人福祉施設職員が4件で、居合わせた一般市民による処置は7件にとどまる。

 市内のAED設置施設数は民間を含め約400カ所。市消防局が民間施設の状況把握を始めたのは10年度からのため、全体の増加数は不明だが、市有施設だけでも05年の7カ所から224カ所に増えている。

 救命法の普及などに取り組む「NPO救命おかやま」代表の氏家良人・岡山大病院救急部長は「市内はAEDの普及が進んだ割には応急処置の件数が伸びていない。学校で使用法を教えるといった対策も必要ではないか」と指摘する。

 市消防局によると、10年度までの12件のうち、AEDにより心肺蘇生して一命を取り留めたのは7件に上る。同局は「救急車が到着する前の処置で生死が決まるケースもある。多くの人に訓練に参加してもらうよう、公民館などでの出前講習や、ノウハウを持つ病院やNPOとの合同講習を増やしたい」としている。

音声案内で操作簡単 救命講習会に記者参加

 いざというとき、AEDをどう使えばいいか―。岡山市南消防署が20日、市消防教育訓練センター(中区桑野)で開いた救命講習会に参加してみた。

 初めて手にしたAEDは箱型で、縦横20センチ、厚さ約10センチ。先に手のひら大のパッドが付いた長さ1・2メートルのコード2本が付いている。講習では電気ショックが流れない訓練用AEDを使用した。

 2人1組となり、パートナーがダミーに心臓マッサージをしている間にAEDで処置する。AEDは心室細動を取り除くものの、血液を送る効果はなく、救命効果を高めるには心臓マッサージとの併用が欠かせない。1人しかいない場合はAEDで処置後、救急隊の到着まで心臓マッサージを続けるのが効果的という。

 バッグからAEDを取り出し早速、電源スイッチをオン。音声案内と、パッドに記された図を参考にしながら人形の右肩と左脇腹にパッドを張り付ける。待つこと数秒。「ショックが必要です。患者から離れてください」との案内が流れる。周囲の人が離れたのを確認して電気ショック用ボタンを押し、処置は終了。わずか1〜2分だった。

 講師の救急救命士新田浩さん(31)によると、実際に電気ショックを与えた場合は患者の体が5〜10センチ浮くほどの衝撃がある。効果が薄れないように処置前はなるべく患者の体から金属類を外し、水でぬれていればふき取っておくことが望ましいそうだ。

 AEDの操作は音声案内があり、思ったより簡単。むしろ心臓マッサージのほうが力もいるので大変だった。3時間の講習会では、ほかに気道確保や止血法なども学んだ。万が一に備え、こうした講習会を体験しておくことをお勧めしたい。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2011年11月25日 更新)

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