文字 

肺がん (上) 倉敷中央病院 診断 遅くとも1カ月以内の確定目指す

石田直 主任部長

 咳(せき)がなかなか治らない、赤い痰(たん)(血痰)が出る、胸が痛い。これらは肺がんの一般的な症状だが、がんの進行の程度にかかわらず症状がほとんどない場合もある。日本のがん死亡原因1位の肺がん。診断や治療について、全国有数の治療実績を持つ倉敷中央病院(倉敷市美和)の呼吸器内科、呼吸器外科で聞いた。

/////////////////////////////////////////////

 肺がんは「非小細胞肺がん」と「小細胞肺がん」の大きく二つに分けられる=表参照。非小細胞肺がんが肺がん全体の80%以上、小細胞肺がんが約15%を占めるといわれる。

 小細胞肺がんの組織型は「小細胞がん」だが、非小細胞肺がんは組織型によってさらに「腺がん」「扁平(へんぺい)上皮がん」「大細胞がん」などに分類され、がんが発生しやすい場所、進行の仕方や速さなどが異なる。「一口に肺と言っても末梢(まっしょう)の肺胞もあれば気管支もあり、肺のどの組織から腫瘍が発生するかによって、がんの種類は異なってくる」と石田直・倉敷中央病院呼吸器内科主任部長は話す。

 2010年、同病院呼吸器内科の初診外来を受診、その後1回以上、同科に入院した肺がん患者は、240例(男性192例、女性48例)だった。平均年齢71・3歳。喫煙歴は「過去に喫煙していた」が108例、「今も喫煙している」94例、「喫煙歴なし」35例、「不明」3例。がんの種類は、非小細胞肺がん184例、小細胞肺がん40例だった。

 来院のきっかけはさまざまだ。岡山県西部の急性期基幹病院という性格上、他院で受けた胸部エックス線検査で影が見つかり紹介されて来る人もいる。「少し体重が落ちた、食欲が無くなった、何となく体がだるいと訴えられて当院を受診、それで肺がんが見つかることもあります」と石田主任部長。喫煙者に多いとされる中枢型肺がん(肺の中心部にできるがん)はエックス線撮影では影が出にくく、咳や血痰の症状があって受診する場合が多いという。

 来院すると、胸の症状がある人には全員エックス線検査を行う。影が見つかれば、その影をさらに詳しく調べるためにCT(コンピューター断層撮影)検査をする。がんが疑われると、放射性ブドウ糖液を注射しその取り込みの分布を撮影する「PET検査」を行うことが多い。

 検査は他にもある。「喀痰(かくたん)細胞診」で痰に混じって出てきたがん細胞を検出したり、血液を採取し腫瘍マーカー(CEA、SCCなど)を調べる。肺がんの治療を決める上で組織を調べることは必須だ。そのため呼吸器用の内視鏡(気管支鏡)で気管・気管支の中やその周辺を観察して組織を採ることや、CT装置で体の断面像を見ながら病変部に針を刺し組織を採る「CTガイド下針生検」なども行う。

 石田主任部長は「検査の都合で待って頂くこともありますが、初診に来られてから遅くとも1カ月以内に確定診断をつけることを目標にしている」と言う。

 診断が確定すれば、肺がんの進行の程度を示す病期(ステージ)も分かる。腫瘍の大きさ、がんの広がり方、リンパ節や他臓器への転移の有無などでI期(IA、IB)、II期(IIA、IIB)、III期(IIIA、IIIB)、IV期に分類。病期によって治療方針は変わってくる。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2011年12月05日 更新)

カテゴリー

ページトップへ

ページトップへ