文字 

肺がん (倉敷中央病院) 化学療法 外来通院が増加 患者教育にも力

吉岡弘鎮医長

倉敷中央病院の通院治療室。外来化学療法が行われる

 2010年、倉敷中央病院呼吸器内科が肺がん患者に行った化学療法(抗がん剤治療)は延べ3033件(外来2040件、入院993件)だった。外来化学療法は通院治療室(計42床、うちベッド29床、リクライニングチェア13床)で行い、件数が年々増えてきた=グラフ参照。外来の件数増加は全国的な流れでもある。

 同病院では、初回化学療法(ファーストライン)の1コース目だけ入院してもらい、副作用の様子などをみて医師が大丈夫と判断すれば外来へ移る。外来で化学療法を安全に継続できれば、外来通院の時間を除くと普段の生活を続けられ、患者のQOL(生活の質)は向上する。

 「ただし、そうなれば患者さんは自己管理が必要になる。担当医師がその方法について詳しく説明、さらに看護師、薬剤師が追加で説明するなど患者教育に力を入れています」と吉岡弘鎮呼吸器内科医長(外来化学療法センター部長)。患者は手渡された自己管理ノートをそれぞれ持ち帰り、化学療法を受けた後の副作用の症状(下痢や吐き気)などを記録、次回の外来に持ってくる。

 化学療法の主な対象は、小細胞肺がん全般と、がんが広がり転移もある病期III、IV期の非小細胞肺がん。患者に投与する抗がん剤は10種類以上あり、複数組み合わせて使うか、または単剤(1種類のみ)で用いる。

 例えば、手術や根治的放射線治療の対象とならない非小細胞肺がんのIIIB期、IV期で初回化学療法に使う代表的な抗がん剤(非小細胞肺がんのうち扁平上皮がんを除く)は、シスプラチンとペメトレキセドの2剤併用。点滴で1日目に2剤を入れ、その後20日間休む。21日周期が1コースとなり、これを基本的には4~6コース行う。2コースが終わった時点でCT検査を行い、薬の効き具合を評価する。

 また、小細胞肺がんの進展型(がんが胸郭の外に広がり、他の臓器にも転移がある)に初回化学療法で用いる抗がん剤の一例には、シスプラチンとイリノテカンの2剤併用がある。点滴で1日目はシスプラチンだけ、イリノテカンは1、8、15日目に投与する。28日周期が1コース。これを基本的には4コース行う。こちらも2コースが終わった時点でCT検査で評価する。

 同病院では、非小細胞肺がんの化学療法で「分子標的薬」と呼ばれる新しいタイプの抗がん剤を使うことがある。がんが増殖するときに栄養を取り入れるため血管を新しくつくることを阻んだり、がん細胞の増殖を調整している分子を標的にする薬だ。日本では現在、注射剤のベバシズマブ(商品名アバスチン)、錠剤のゲフィチニブ(同イレッサ)とエルロチニブ(同タルセバ)の3薬が肺がん治療薬として承認されている。

 吉岡医長は「分子標的薬ゲフィチニブの内服開始から2年経過し、がんが縮小したまま仕事をされている方もおられます。来年、新たな分子標的薬(ALK阻害薬)の使用が承認される見通し」と話す。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2011年12月05日 更新)

カテゴリー

ページトップへ

ページトップへ