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岡山大グループ がん抗原 新種発見 ワクチン開発期待 肺がん患者に高い効果?

 岡山大大学院医歯薬学総合研究科の中山睿一(えいいち)教授(免疫学)と佐藤修一郎助手らのグループは、がんワクチンの素材として注目される「CT抗原」の新種を、ヒトの肺がん細胞から発見した。CT抗原は世界中で四十種類以上が確認されているが、新種はより多くの肺がん患者に効果のある新型ワクチン開発につながる成果として期待される。

 同グループは、ワクチン開発に向け基礎データを集めるための研究を、同大倫理委員会に二十八日申請し、承認された。

 同グループによると、がん患者から採取したがん細胞を遺伝子解析した結果、肺がんにだけ特異的に存在し、未知の構造をしたタンパク質を発見。この遺伝子が、これまでCT抗原の可能性が指摘されていた「XAGE―1」遺伝子と一致した。さらに、精巣以外の臓器や筋肉に存在しないことが分かり、CT抗原と断定した。

 がんワクチンは特定の抗原を人工合成して体内に投与するが、その抗原をがん細胞内に持っていないと効果がない。肺がん患者四十九人のがん細胞を調べたところ、45%の患者が「XAGE―1」を持っていた。これまで最も有力なCT抗原の一つである「NY―ESO―1」は、肺がん患者の約5%しか持っておらず、高い効果が期待されるという。

 中山教授は「急増している肺がんに対する有力な抗原は見つかっておらず、XAGE―1発見の意義は大きい。リンパ球を活性化させ、抗体を作り出す能力も高いと考えられており、ワクチン開発を成功させたい」と話している。


非常に有望

 高橋利忠愛知県がんセンター総長(腫瘍(しゅよう)免疫学)の話 XAGE―1はより多くの肺がん患者が持っており、がんワクチン開発において非常に有望な抗原といえる。患者にとって朗報となるだろう。


ズーム

 CT抗原とがんワクチン CT抗原は、がん細胞と精巣にだけ存在するがん抗原の総称。人の免疫システムは、異物である抗原を認識すると抗体をつくって攻撃したりするが、がん細胞は自分の細胞が変化(がん化)したため異物と認識しにくい。このため、ワクチン療法は“目印”となるがん抗原を投与することで、リンパ球を刺激してがん細胞の撃退を目指す。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2006年03月01日 更新)

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