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細胞増殖の特性再現 岡山大・守屋准教授ら 世界初、がん薬の効率開発期待

守屋央朗准教授

 岡山大異分野融合先端研究コアの守屋央朗准教授(システム生物学)らのグループは、カビの一種における細胞増殖の特性を、コンピューター上で再現する仮想モデルを完成させた。細胞増殖は生命の根幹に関わる働きで、ヒトにも共通しているとみられる。モデルの応用で、細胞が異常増殖するがんの治療薬などが効率良く開発できる可能性があるという。成果は英専門誌の電子版に7日掲載された。

 実験に用いたカビは単細胞の分裂酵母。細胞分裂で主な役割を果たす遺伝子32個を選んで特定のタンパク質の発現量を過剰に増やし、どの段階で細胞分裂ができなくなるか、細胞自体が死滅するかという頑健性を測った。

 2006年には、より原始的な出芽酵母でも頑健性を測定。2つの酵母は共通の祖先から10億年前に分かれ、遺伝的に大きな開きがあるが、両者の頑健性や増殖パターンを比べたところ、分裂サイクルを左右する遺伝子に共通原理が見つかった。グループは「長年の淘汰(とうた)に耐えて保存されてきた原理だと考えられる」としている。

 これらの結果に基づき、英オックスフォード大の研究者と、特定のタンパク質への耐性や分裂周期といった細胞の行動様式を、コンピューター上で再現するモデルを世界で初めて完成させたという。

 がんなど遺伝子異常で特定のタンパク質が過剰に増える病気の治療薬開発は、長期にわたる地道な実験が主体。今後、ヒトなどの細胞で仮想モデルを作ってシミュレートできればその効率は飛躍的に高まるとされ、守屋准教授は「がん細胞のみ死滅させ、正常細胞には影響がないといった薬の成分発見につながれば」という。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2011年12月07日 更新)

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