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慢性炎症の原因抗体発見 岡山大病院・三宅助教ら

三宅康広助教

 岡山大病院消化器内科の山本和秀教授(消化器・肝臓内科学)と三宅康広助教らのグループは13日、ウイルスなどの異物を排除するリンパ球の活性化を持続させ、慢性炎症の原因になっていると考えられる「自己抗体」を発見したと発表した。リンパ球表面に現れて炎症を沈静化させるタンパク質「PD―1」の働きを阻害する抗体で、慢性B型肝炎など慢性炎症性疾患患者の血中に多く存在。新たな治療薬の開発につながる成果という。

 慢性炎症性疾患は、自己免疫が異常をきたして発症するとされる自己免疫性肝炎のほか、ウイルス性の慢性B型、C型肝炎や原因不明の腸疾患・クローン病などがあり、症状が悪化するとがん化したり、臓器不全などで死に至るケースも多い。

 グループは2008年から約3年かけ、同疾患患者や健常者約300人の血液を検査。B型肝炎では87%、クローン病84%、C型肝炎70%、自己免疫性肝炎63%の患者から同抗体を検出。一方で健常者の陽性率は3%だった。

 血液中にあるリンパ球の7〜8割を占める「T細胞」では、ウイルスの侵入などで活性化状態になると、炎症をコントロールするために表面にPD―1が発現。グループは、慢性炎症性疾患患者は同抗体の存在によりPD―1が十分に働かず、T細胞が活性化したままになることで炎症が慢性化していると考えた。

 三宅助教は「今後も研究を進め、新たな検査法や治療薬を早期に開発し、臨床応用につなげたい」としている。

 三宅助教らは、PD―1に対する抗体を悪性腫瘍の治療薬とする海外研究で、自己免疫性疾患が発症したとする論文に着目。慢性炎症性疾患患者の血中にもPD―1の働きを妨げる抗体があると想定し、研究してきた。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2011年12月14日 更新)

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