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ドッグセラピー 認知症緩和に力 生長豊健医師(岡山)の活動、本に

「セラピードッグの子守歌」

セラピードッグと触れ合うグループホーム入所者と言葉を交わす生長医師(左端)と職員

 岡山市北区立田の老人保健施設・高松アクティブホームなどを運営する生長豊健医師(65)が10年近く取り組む「ドッグセラピー」の成果を取材した「セラピードッグの子守歌 認知症患者と犬たちの3500日」(講談社)が出版された。高齢者のリハビリなどに犬を介在させた症例は400近くに上り、近年は特に認知症の緩和に力を注いでいる。

 著者はノンフィクションライター真並恭介さん(60)=大阪。

 ドッグセラピーは同ホームやグループホーム、通所のデイケアなど10施設で実施。人と視線を合わせたり、触れられてもじっとしている訓練を受けた4匹が活躍する。脳卒中の後遺症の機能訓練で犬と一緒に歩いたり、認知症の高齢者に週1、2回、定期的に犬と触れ合う時間を設けている。職員のカンファレンスで目標を設定し、3カ月ごとに効果を判定する。

 先進地の米国からセラピードッグを導入した2002年2月から11年8月までに取り組んだ症例は387。うち41例は歩行距離が延びるなど目標を達成した著効例、219例はある程度改善した有効例で、合わせて7割近くで効果を認めた。

 治療が難しいとされる認知症の緩和が目的の130例に限っても著効13例、有効66例と6割で効果があった。周辺症状の暴言、暴力がやんだり、何事も意欲がなく無表情だった人が笑顔で振る舞うようになったという。

 「犬と親密な関係を築く中で『この子には私が必要だ』という思いからポジティブ(前向き)な生きる意欲が自発的に起きるのではないか」と生長医師は要因を分析。「この10年でドッグセラピーは癒やしにとどまらず治療に使えると確信した。コストの高さが悩みだが、症例を重ね介護保険の適用を目指したい」と意気込んでいる。

 「セラピードッグの子守歌」は四六判、254ページ。1470円。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2012年01月08日 更新)

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