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心停止肺移植へ準備加速 岡山大病院チーム スペインなど“先進地”を視察 ガイドライン作りに反映 

 岡山大病院肺移植チームは、国内では例がない「心停止肺移植」の実施に向け、2、3月の計2回、海外視察を行う。第1陣は大藤剛宏肺移植チーフらが15日、“移植医療先進地”のスペインへ出発。3月にはオーストラリアの医療機関を訪問する。現地の移植医から摘出臓器の維持法といった脳死とは異なる移植手順の情報を得て、国内のガイドライン作りに反映させる狙いで、数年後の初実施を目指す。

 国内における心停止肺移植は法律で禁止されてはいないが、ガイドラインや臓器の斡旋あっせんシステムがない上、延命治療の過程で肺の状態が悪化するなど、実質的に実施できない状態。しかし、2010年に改正臓器移植法が全面施行され、脳死ドナー(臓器提供者)が急増する一方、移植希望者に十分行きわたる状況にまで至っておらず、一部の移植関係者が可能性を探ってきた。

 大藤チーフは「わが国の肺移植技術は世界トップレベルで、技術的には『心停止』も可能。視察で準備を加速させたい」という。

 スペイン視察は15〜23日、同大病院の麻酔科医や移植コーディネーターら5人がマドリード市内の病院などを訪れる。大藤チーフによると同国では3年ほど前から、心筋梗塞で搬送中に心停止した患者らをドナーとする心停止移植を実施。現地の移植医から摘出した肺を専用装置につなぎ、体外で生存状態を維持する「体外肺灌流かんりゅう(循環)技術」や臓器の冷却法などを学ぶ。

 3月中旬には、大藤チーフがかつて留学し、心停止肺移植を行っているオーストラリア・メルボルン市の病院に、岡山大移植医候補の呼吸器外科医ら7人が訪問。この病院が昨年行った肺移植75件のうち、心停止は17件で、生存率などの成績は脳死(58例)よりも良好という。

 視察後、大藤チーフらはガイドラインの素案を作り、年内にも国内7カ所の肺移植施設に提示。承諾が得られれば、「日本肺および心肺移植研究会」など関連学会の協議と並行し、斡旋システムを構築していく。

 大藤チーフは「移植を受けられる患者はまだまだ少ない。一刻も早く体制を整え、多くの患者さんを救いたい」としている。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2012年02月14日 更新)

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