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メラニン色素、移動の仕組み確認 岡山理科大・安藤教授ら 美白化粧品開発に期待

安藤秀哉教授

 岡山理科大の安藤秀哉教授(色素細胞学)らのグループは、肌の「しみ」の原因となるメラニン色素が皮膚の細胞間を移動するメカニズムを確認した。色素の移動や集中をコントロールできれば、肌の色むらを改善する美白化粧品や医薬品の開発などにつながると期待されている。

 皮膚は紫外線を浴びると、遺伝子が傷付くのを防ぐため、「色素細胞」で黒いメラニン色素を生成。色素は主に表皮を形成する「角化細胞」に受け渡され、遺伝子を含んだ核を覆って“日傘”の役割を果たす。しかし、年を取るにつれて色素の過剰な生成、局所的な集中や不足が起こり、しみや白斑の原因となる。

 安藤教授らはヒトの色素細胞、角化細胞を培養して電子顕微鏡で観察。色素細胞はメラノソームという小胞(直径200〜300ナノメートル=1ナノメートルは100万分の1ミリ)の中で色素を作り、数十〜数百個のメラノソームを別の袋(同4〜5マイクロメートル=1マイクロメートルは千分の1ミリ)に包んで放出していた。袋は角化細胞に取り込まれた後に崩壊、中のメラノソームは核の周囲に集まっていた。

 色素の移動は従来、両細胞の一部がいったん融合して受け渡す▽色素細胞から出た個々の色素を角化細胞が取り込む―といった説があったが、詳細は不明だった。

 安藤教授によると、色素移動の仕組みが分かったことで、メラノソームを包んだ袋の放出、角化細胞への取り込み、袋の崩壊といった働きを抑制する新タイプの美白化粧品など、しみ改善剤の開発につながる可能性があるという。既存品は、色素生成の抑制などが主となっている。

 今後、ヒト細胞を培養した人工皮膚を使っての研究、実験を予定している。安藤教授は「メラノソームを包む袋の成分などは未解明で、興味深い。機能性化粧品や医薬品への応用に向け、研究を進めたい」としている。

 成果は近く、欧米の皮膚科学会の学術誌に掲載される。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2012年02月27日 更新)

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