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うつの時代 どう生きる 岡山の精神科医・下山さんがエッセー集

下山さんの3冊目のエッセー集となる「億劫良の細道」

下山敦士さん

 岡山市の精神科医、下山敦士さん(70)が山陽新聞連載などのエッセーをまとめた「億劫良(おっくうら)の細道―精神科医ぼけて語る―」を出版した。ストレスの多い「うつの時代」や老後をどう生き抜くか。そのヒントを示している。

 例えば4月、社会に出た新入社員。慣れない環境に心身の不調を感じることも多い。かつて企業の新人研修でメンタルヘルスについて講話した下山さんは、会社幹部の詰め込み教育で疲れ果てていた新人に「幹部といえども、自分の立場でものを言っている」と話したところ、表情がリラックスし、質問や意見も飛び交うようになったという。

 その経験から「『状況を客観視する力』が彼らにゆとりや元気を与える」と説く。さらに「新しい環境に慣れるまで、しばらくの間の辛抱と心得て、ゆっくり慣らすことが大切」と適度に力を抜くことや気分転換を勧める。

 2009年5〜8月、山陽新聞くらし面に連載した「老いて幸せ」や、05年4〜6月の「こころの処方せん」職場編などを再編成、加筆。自作の挿絵を添えている。

 書名の「億劫良」は山上憶良をもじった、短歌や俳句での下山さんの筆名。億劫は面倒くさいの意味で使われるが、元は極めて長い時間を示す仏教用語。「長い目で物事を見て、大きな喜びがあっても浮かれすぎず、苦悩の中にあっても救いを見つけたい」という願いを込めている。

 下山さんは津山市出身。05年まで32年間、岡山労災病院に勤務。現在は岡山市北区昭和町の日笠クリニックなどで診療している。

 A5判、207ページ。2100円。丸善岡山シンフォニービル店(同表町)出版サービスセンター刊。同店で販売している。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2012年04月17日 更新)

タグ: 精神疾患

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