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脳動脈瘤に新治療法導入 岡山大病院 ジェルとコイルでこぶ内の隙間埋める

治療で使われるハイドロコイル(写真上)。水分を吸うと膨らむ(同下)

 岡山大病院(岡山市北区鹿田町)は、脳動脈瘤(りゅう)に、血液と反応して膨らむジェルをコーティングした「ハイドロコイル」を埋め込む新たな治療法に取り組んでいる。既存のコイルでは埋めきれない隙間にジェルが入り込み、こぶの破裂を防ぐ。高い再発率(約20%)の低下も期待されている。

 脳動脈瘤は脳血管の一部が弱ってできたこぶ。通常は無症状だが、破裂し、くも膜下出血を起こすと、死亡したり、後遺症に苦しむことも多い。

 新しい治療法は、米国企業が開発したハイドロコイル(直径約0・3〜0・4ミリ)を、患者の太ももからカテーテルで挿入して使用する。プラチナ製コイルの表面に血液中の水分を吸って膨らむジェルがコーティングしてあり、挿入5分後から反応、15分ほどで2倍に膨張して、こぶ内部を隙間なく埋める。

 国が2010年に認可して以降、徐々に普及。岡山大病院は昨年導入し、年間100人前後の脳動脈瘤患者のうち、こぶが大きい1〜2割の患者に適用している。国内の販売メーカーによると、現在100を超える医療機関が導入したという。

 従来は、カテーテルでジェルがコーティングされていない金属製コイルをこぶの内部に詰める「コイル塞栓(そくせん)術」か、開頭手術を行い、こぶの入り口を金属製クリップでふさぐ「クリッピング術」で治療してきた。

 コイル塞栓術は、血液で満たされたこぶ内部を完全に埋めることができず、2年以内の再発率は約20%。クリッピング術(約1%)よりもはるかに高いのが課題だった。

 岡山大病院で担当する杉生憲志・脳神経外科講師は「コイル塞栓術は体への負担が少ない。ハイドロコイルと丁寧な治療で、再発を抑えたい」とする。

 最新の国際研究によると、約30%だった再発率がハイドロコイルの使用で約20%まで改善された。国内では欧米よりも技術水準が高く、さらなる再発率の低下を期待。今後3年間、神戸市立医療センター中央市民病院や岡山大病院などで患者500人の再発率などを調べることにしている。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2012年05月11日 更新)

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