文字 

エックス線検査 受診楽に、画像鮮明に 岡山、倉敷の研究者が補助装置開発

グループが開発した圧迫用バッグ。空気の力で3段階に高さ調節できる

圧迫用バッグを使って撮影したエックス線画像(上)。従来方法の画像に比べ、胃壁表面のひだを鮮明に写している

 岡山大大学院自然科学研究科の鈴森康一教授(機械工学)らのグループが、胃のエックス線検査で、画像を鮮明に撮影するための補助装置を開発した。腹部を圧迫する器具で、遠隔操作により高さを段階的に調節。胃壁の撮影範囲が広がり、腫瘍などの早期発見の可能性が従来法より高まるという。特許出願しており、28日に浜松市の学会で発表した。

 胃のエックス線検査で、受診者は造影剤のバリウムを飲み、放射線技師の指示に従って、撮影台の上で両脇のグリップを握ったままバリウムを胃壁に塗り付けるようにあおむけや腹ばいなど、体の向きを変える。その際、胃の上側や前側は自力でバリウムを付着させることが難しかった。

 そのため技師は「枕」と呼ばれるタオルなどを台と腹の間に挟み、胃を圧迫しながら台を前に傾けて撮影してきたが、最大で45度ほど傾き、約1分間続く検査は体力的にきつく、撮影を中断するお年寄りもいた。

 そこで、2009年に技師で同大学院保健学研究科の澁谷光一准教授(放射線技術学)が鈴森教授に相談。同年から倉敷成人病センター(倉敷市白楽町)の技師で同科修士課程の鷲見和幸さんら、同大学院の工学系と放射線技術系の研究者5人で開発に当たった。

 グループは、樹脂と綿の二重構造の圧迫用バッグ(縦11・5センチ、横13センチ)を試作。遠隔操作してチューブで空気を送り込み、高さを2、4・5、9センチの3段階に変えられるようにした。

 倉敷成人病センターの協力で昨年3月から約1年、職員ら36人の検査で使用したところ、撮影が難しかった形の胃(横胃、牛角胃)も鮮明に撮れた上、台の傾斜も10〜15度軽減、遠隔操作で検査効率も上がったという。

 グループは今月、バッグの構造と検査法を特許出願。最適な高さや耐久性を検証し、バッグを膨らませた状態で縦横に動かす方法など、今後も改良を重ねていく。

 技師歴15年の鷲見さんは「初期のがんなどが飛躍的に見つけやすくなると考えられる。一人でも多くの患者の役に立ちたい」と説明。鈴森教授は「2、3年後をめどに実用化したい」としている。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2012年05月29日 更新)

カテゴリー

ページトップへ

ページトップへ