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(40) 糖尿病の血糖管理 心臓病センター榊原病院 清水 一紀 糖尿病内科部長(55) リアルタイムに血糖測定 欧州でインスリン療法学ぶ

3年前には「恐らく100キロを超えていた」がダイエットを成功させて180センチ、80キロをキープ。自らの体験も交えてそれぞれの患者に合った治療法を考えている

小型化された最新のCGM。左側の電極センサーを皮下に挿入し、接続した右側のレコーダーに3日間連続で血糖変化を記録する

 柔らかい物腰は聞き上手、語らせ上手。「いつも患者さんがいろいろ教えてくれる」と感謝する。

 映画監督の大森一樹、ミュージシャンでもある北山修のように、医学部を卒業後に芸術分野など異世界で活躍する人物にあこがれ、五木寛之が暮らした金沢を選んで医大に進学。学生時代はフォークバンドでギターを弾き、放送局でディスクジョッキーも経験した。学外での“社会勉強”が「今になって患者さんとのコミュニケーションに役立っているのかも」と振り返る。

 岡山大第二内科に入局し、1992年、松山市の愛媛県立中央病院内科へ赴任。初めて糖尿病患者を診ることになった。

 当時は清水自身、「慢性病に専門医の必要があるのか?」と疑問に思っていた。ところが夜間救急の呼び出しもしょっちゅう。足が壊死えししたり腎不全の状態で受診する患者も多く、突然亡くなる例が後を絶たなかった。

 国内では研究者も有用な論文もまだ少ない。「何でも見てやろう」精神が頭をもたげた2000年、インスリン製剤の開発が進んでいるデンマークのステノ糖尿病センターへ短期留学。その後も毎年、欧州糖尿病学会などに足を運び、口演発表や座長を経験した。

 欧州で驚いたのは、血糖測定とインスリン療法を助けるさまざまなデバイス(装置)が用意されていること。「インスリンを使いこなし、血糖管理できる医者になろう」。「糖尿病専門医とは?」という問いに自分なりの答えを見つけた。

 空腹時の血糖値は70〜110(100ミリリットル中ミリグラム)が標準。治療中の患者は食後に300まで上がっても、夜間睡眠中に70未満の低血糖状態に下がってしまうことがある。CGM(持続グルコースモニター)というデバイスを身につければ、3日間連続で血糖値の変化を記録できる。一日の変動パターンを知ることが重要だ。

 血糖を下げるインスリン療法は一日数回、おなかや太ももに皮下注射するが、欧州ではチューブを皮下に埋めて常時、少量ずつ注入するポンプ療法が普及していた。食事や睡眠に合わせて注入量を調節し、低血糖を防ぐことが可能になる。

 CGMは2010年に国内で保険適用され、インスリンポンプも本年度の診療報酬改定により、一般病院でも導入しやすくなった。ようやく清水が学んだ科学的な治療法が使える時代を迎えた。

 昨年4月に赴任した榊原病院は新たな挑戦の場。血管の病気である糖尿病は腎臓や網膜、末梢まっしょう神経のみならず、心臓の太い血管にも大きなリスクになる。

 自分が血糖管理すれば心臓手術の成績をどのくらい上げられるのか―。CGMを活用し、ベッドサイドでリアルタイムに血糖測定するシステムを試行。術後の傷の治りが早く、入院日数が短くなる血糖値を探っている。

 「患者さん一人一人の性格や考え方に合わせ、治る力をいかに引き出すかが一番大切。糖尿病は長い付き合いになりますからね」。目線は常に患者とともにある。

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 しみず・いっき 山口県立徳山高校、金沢医大卒。岡山大第二内科へ入局し博士号修得。愛媛県立中央病院内科、同今治病院副院長を経て昨年4月から現職。著書に「SMBGで血糖管理・指導の達人になる」(南江堂)。

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 低血糖症状 糖尿病になると高血糖状態が続くだけでなく、血糖が下がりすぎたときに働く機能も低下してしまう。通常、血糖値が50以下になると発汗、手足の震え、熱感などの症状が現れ、進行すると昏睡(こんすい)に至る。治療中の患者は砂糖やブドウ糖を身につけておくことが勧められる。

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外来 清水部長の外来は毎週月曜日午前(8時〜11時受け付け)と火曜日午後(1時〜3時)。かかりつけ医の紹介状持参が望ましい。


心臓病センター榊原病院

岡山市北区丸の内2丁目1の10

電話 086−225−7111

メールアドレス

sakakibara−hp@sakakibara−hp.com
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2012年06月04日 更新)

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