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子宮頸がんワクチン 接種率高まる 岡山県 副反応不安踏まえ啓発に力

県が作成した啓発動画の一場面。病気の特徴やワクチンの効果を伝えている

伊原木知事が生徒にワクチン接種を呼びかけた出前講座=7月、大安寺中等教育学校

 子宮頸(けい)がんを予防するHPVワクチンの接種率を上げようと、岡山県が啓発に力を入れている。副反応への懸念から一時は国が推奨を取りやめ、県内の接種率は大幅に下がったが、ワクチンの効果を伝える動画やリーフレットの作成、出前講座の実施など独自の取り組みが奏功し、全国を上回る水準に。国は4月から推奨を再開させており、県は接種への不安を踏まえつつ「正しく理解し、接種を予防に役立てて」と呼びかける。

 「20代、30代の女性に子宮頸がんになる人が増えとんよ」。バーチャルユーチューバーの高校生が岡山弁で語るのは、県が7月に作成した啓発動画だ。

 子宮頸がんはヒトパピローマウイルス(HPV)の感染で起こり、ワクチンは17歳までの定期接種(最大3回)で発症リスクが88%減少するとされる。動画ではこうした特徴や、国内で年間約3千人が亡くなっている現状、小学6年から高校1年が受けられる無料接種なども説明する。

■全国上回る

 定期接種は2013年4月に始まったが、手足のしびれなど副反応が疑われる報告が相次ぎ、国が推奨を中止。定期接種者をその年の13歳女子数で割った県内の1回目の定期接種率は、13年度に14・5%だったが、14年度は1・3%になった。

 ただ、定期接種は推奨中止期間も行われ、16年には関係学会が「有効性は明らか」との見解を発表。県は推奨再開を待たず、19年度から有効性やリスクを周知する事業を始め、独自に作成したリーフレットを学校や自治体に配布、教職員向けの研修会も開いて理解を求めてきた。

 この結果、19年度の接種率は全国3・3%に対し、県内は10・2%。20年度も全国(15・9%)を上回る23・4%になった。

 今年7月には伊原木隆太知事が大安寺中等教育学校(岡山市)で出前講座を開催。「子宮頸がんはワクチンで予防でき、接種してほしい」と述べた。

■正しい理解必要

 ただ、副反応への不安は小さくない。県が3月に行った女子中高生へのアンケートでは、ワクチンを受けるかどうかの設問に「いいえ」「分からない」とした計876人の4割近くが「副反応が心配」と回答した。

 県の協力医療機関の岡山大病院には13年以降、副反応を疑った相談が約20件あり、ワクチンとの因果関係は不明だが、脱力感やめまいなどの症状が寄せられた。産婦人科の小川千加子医師は「接種後のストレス反応はどのワクチンでも起こり得る」とした上で「副反応への不安感をなくすためにも正しい理解が必要」と指摘する。

 県健康推進課は「予防策の一つとして正しくワクチンを知ってほしい。不安な場合は県やかかりつけ医に相談して」としている。

 子宮頸がん 子宮の入り口にできるがんで、国内では年間約1万人が診断されている。ワクチン接種でがんの原因となるHPV感染を50~70%予防できるとされる。国はワクチン接種の推奨中止期間に機会を逃した女性に本年度から3年間、無料で接種できる救済措置を設けた。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2022年10月22日 更新)

タグ: がん女性

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