文字 

高額療養費制度の窓口負担軽減 通院時も適用、利用広がる

 高額療養費制度で、入院時の医療機関での支払いが一定額までで済む仕組みが、本年度から通院時にも適用され、岡山県内で利用が広がっている。厳しい経済情勢下、「病院の窓口で多額の現金を払う必要がなくなり、家計が助かる」などと通院のがん患者らに好評だ。

超過分を支給

 高額療養費制度は、患者の負担軽減のため1973年に導入された。1カ月に支払う医療費の自己負担が限度額を超えた場合、超過分が支給される。患者が医療費の1k3割を一度払った後で、加入する公的医療保険に申請して3、4カ月後に払い戻しを受ける仕組み。2年以内であれば、さかのぼって請求できる。

 それが入院の場合は2007年4月から、「限度額適用認定証」を提示すれば、病院などでの支払いが年齢に関わらず限度額までにとどまるようになった。通院でも、抗がん剤治療などで医療費が高額になっており、国が今年4月から追加適用にした。

 手続きは、70歳以上の低所得者や、70歳未満の人は事前に、加入する健保組合、全国健康保険協会(協会けんぽ)、市町村の国民健康保険窓口などに申請し、限度額適用・標準負担額減額認定証などをもらう。70歳以上の一般、現役並み所得者は特に手続きはいらず、70~74歳は高齢受給者証、75歳以上は後期高齢者医療被保険者証を提示すれば限度額までの支払いで済む。

保険適用の医療費が対象

 限度額は70歳以上か70歳未満、さらに所得によって異なる=別表参照。対象になるのは保険適用される医療費で、計算は医療機関ごと、1カ月(1日~末日)ごとになる。ただし同じ医療機関であっても入院と外来、医科と歯科は別々に適用される。

 医療費の自己負担割合は、70歳未満が3割(就学前は2割)。70歳以上は1割となっているが、現役並み所得者は3割。そこで例えば、60歳で所得区分が「一般」に当たる人が1カ月に2回、同じ病院に通院し、医療費が20万円ずつ計40万円かかったとすると―。

 この人は自己負担割合が医療費の3割だから、病院の窓口で6万円ずつ計12万円を払う。自己負担限度額は、別表の計算式に沿い、8万100円+(20万円+20万円―26万7千円)×0・01=8万1430円のため、後から申請すれば12万円との差額3万8570円が払い戻される。

 一方、あらかじめ限度額適用認定証を提示すれば、初回は6万円を払うが、2回目は限度額8万1430円から初回の負担分を差し引いた2万1430円の支払いで済む。過去1年間で高額療養費を支給された月が4回以上になると、限度額は一層軽減される。

 また、個別では限度額に達しなくても、本人や同じ医療保険に加入する家族で1カ月の自己負担額を合算し、払い戻しを受ける仕組みもある。個人単位で医療機関ごとに医科入院、医科外来、歯科入院、歯科外来に分けて自己負担額を計算。70歳未満の人はそれぞれ2万1千円以上のものを、70歳以上は金額に関わらず自己負担額を合算し、限度額を超えると払い戻し対象になる。ただし医療保険が使えない入院中の差額ベッド代、食事代などは対象外だ。

認定証発行が増加

 中小企業の従業員や家族約70万人が加入する全国健康保険協会岡山支部(岡山市北区本町)では、限度額適用認定証の発行件数が増加傾向にあり、11年度は前年度比9・2%増の1万1118件。通院時も適用可能になった今年4月前後は3月1070件、5月1035件と、前年同月比24~25%増えている。

 同支部の吉田潤市・企画総務部長は「認定証の提示によって、患者が後から高額療養費を申請する手間が省け、支払う額が少なくなるため病院の未収金対策にもつながる」と話す。

 岡山済生会総合病院(同伊福町)で医療ソーシャルワーカーを務める井上美夕起・医療福祉課長によると、通院で高額療養費の対象になるのは乳、肺、大腸がんなどの抗がん剤治療が代表的。「長期間通院し化学療法を続ける例は多く、上限額までの支払いで済み、喜ばれている」という。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2012年07月02日 更新)

タグ: がん

カテゴリー

ページトップへ

ページトップへ