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がん新治療法、13年から臨床研究 岡山大病院藤原教授ら研究グループ

藤原俊義教授

 岡山大病院の藤原俊義教授(消化器外科)らの研究グループは、独自開発した、がん細胞だけを死滅させるウイルス製剤「テロメライシン」と放射線治療を併用した臨床研究を来年から始める。食道がん患者らが対象で、安全性や治療効果を検証。高齢者ら外科手術や抗がん剤治療が難しい患者への新治療法として、早期実用化を目指す。

 テロメライシンは、無害化したアデノウイルス(風邪ウイルスの一種)に、細胞ががん化した時にだけ活性化する遺伝子を組み込んだウイルス。細胞内で急速に増えて細胞死を誘導する。2006年から米国で臨床試験を行い、一定の腫瘍縮小効果や安全性を確認している。

 国内初となる臨床研究は7月に国から承認された。これまでの研究から効果が見込める食道がんや頭頸部とうけいぶがん、肺の悪性腫瘍患者で遠隔転移のない12人に実施する計画。テロメライシンを患部に注射した後、通常の放射線治療に使う総線量60グレイの放射線を6週間にわたって照射する。さらに、18日目と32日目にテロメライシン約1CCを内視鏡などで患部に注入する。

 ウイルス量は3パターン用意。最初の3人には100億個、次の3人に1千億個、残り6人に1兆個のウイルスが含まれた製剤を投与し、効果的な量を探る。テロメライシンには放射線で壊したがん細胞のDNA修復を防ぐ特性もあり、この効果も検証する。

 ウイルス製剤は岡山大発ベンチャーのオンコリスバイオファーマ(東京)が製造を依頼している米国企業が保管。輸入などに時間がかかるため、臨床研究の着手は13年になる。研究期間は2年間。

 藤原教授は「最終的には製薬会社と契約し、大規模な治験を実施して創薬につなげ、できるだけ早く医療現場に届けたい」としている。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2012年08月21日 更新)

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