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(45) 炎症性腸疾患 チクバ外科・胃腸科・肛門科病院 竹馬 彰 理事長(50) 潰瘍性大腸炎、クローン病 新薬でコントロール

診察室ではソフトな対応を心掛ける。難病ゆえに治療に難渋することも多いが「患者さんの症状が落ち着き、笑顔を見た時が一番の喜び」と話す

 人間が生きる上で、飲食物を摂取し消化・吸収、排せつまで担う消化管の役割は重要だ。この管に原因不明の炎症が起きるのが、厚生労働省指定の特定疾患(難病)である潰瘍性大腸炎とクローン病。国内患者が増え続ける二つの炎症性腸疾患に、竹馬は長年対峙(たいじ)している。

 消化管は、口腔(こうくう)に始まり咽頭、食道、胃、小腸、大腸、肛門までを指す。このうち大腸だけに発症し、病変が連続しているのが潰瘍性大腸炎。一方、クローン病は消化管全体に炎症部位が飛び飛びに見られ、特に小腸と大腸の境目に生じやすい。

 国内患者(2010年度)は潰瘍性大腸炎が約12万人、クローン病は約3万2千人。「発症は潰瘍性大腸炎が20〜30代と50代以降に多く、クローン病は10代後半から20代前半が顕著」と竹馬は説明する。ともに腹痛や下痢、血便などを引き起こすが、初期のクローン病では症状が現れない場合もあるという。

 原因不明ゆえに根治療法はなく、いずれも対症療法となる。だが近年、薬剤の進歩によって「潰瘍性大腸炎患者の多くがほぼ症状のない緩解に向かい、クローン病も従来よりコントロールしやすくなった」と話す。

 潰瘍性大腸炎では、5―ASA製剤、ステロイド剤、免疫抑制剤を使用した薬物療法が基本。他に、白血球除去療法も行う。循環装置を使って血液を体外に出した後、炎症を生みだす物質を作る白血球を減らし、体内に戻す仕組みだ。

 クローン病では従来、潰瘍性大腸炎と同様な薬物療法に加え、栄養療法が中心だった。炎症と関係するタンパク質をアミノ酸まで分解させ、脂肪分を控えた栄養剤を取る。そこへ炎症の抑制効果が高い新薬「抗TNF―α抗体薬」が登場し、治療法は大きく前進した。

 それでも、こうした内科的治療が奏功しない症例はある。炎症は粘膜表面だけでなく、深い層に及んで潰瘍をつくる。病状が進行し、腸管が狭くなったり、腸管に穴が開いたりすると、手術を余儀なくされる。

 肛門や大腸を診る専門病院としてチクバ外科・胃腸科・肛門科病院を開設した竹馬浩(現会長)の長男。「父の背中を見て育ち、魅力を感じた」と消化器外科医になった。礎は、2人の師の下で築かれたといえる。

 研修医時代、栃木県立がんセンターで薫陶を受けた消化器外科医清水秀昭(現病院長)。続いて恵佑会札幌病院に勤め出会った、食道がん手術で名高い同細川正夫(現理事長)。清水から「患者に優しく寄り添う医師の心構え」を、細川からは「専門的知識や手技、外科医としての姿勢」を学び、成長した。

 開院40周年の今月1日、父の後を継ぎ第2代理事長に就任した。患者約300人を抱える二つの炎症性腸疾患の診断・治療拡充に向け来春、消化器内科医を採用予定。体の負担が少ない腹腔(ふくくう)鏡手術も増やし、専門病院の総合力を高めていく考えだ。

 「実るほど頭(こうべ)を垂れる稲穂かな」。座右の銘通り、謙虚な心を忘れず、柔和なまなざしで、竹馬は今日も難病の患者と向き合う。(敬称略)

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 ちくば・あきら 倉敷天城高、香川医科大(現・香川大医学部)卒。栃木県立がんセンターで研修後、恵佑会札幌病院を経て1992年チクバ外科・胃腸科・肛門科病院に勤務。2000年副理事長、12年8月から現職。日本大腸肛門病学会指導・専門医。趣味は登山、ドライブ。

 抗TNF―α抗体薬 クローン病で炎症を起こすタンパク質「TNF―α」の働きを抑える生物学的製剤。国内では、2002年にインフリキシマブ(製品名レミケード)、10年にアダリムマブ(同ヒュミラ)が承認された。レミケードは点滴で初回投与後2週、6週、以後8週間隔で投与する。構造の一部にマウス由来のタンパク質を用いているため、アレルギー反応が起きやすい。一方、ヒュミラは2週間に1回、皮下注射する。完全ヒト型の製剤のため、使用が広がっている。レミケードは10年、潰瘍性大腸炎の薬としても追加承認、使用されている。

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 外来 受付時間は木曜を除く月〜土曜日(祝日休診)の午前8時半〜11時半と午後1時〜5時半。竹馬理事長は月、金曜日の午前と月、土曜日の午後に診察。
 

チクバ外科・胃腸科・肛門科病院

倉敷市林2217

電話 086―485―1755
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2012年08月27日 更新)

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