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がん細胞光らせ観察 岡山大病院がシステム研究

蛍光したがん細胞を観察するビデオスコープとモニター

 岡山大病院の藤原俊義教授(消化器外科)らのグループは、オワンクラゲが持つ緑色蛍光タンパク質(GFP)の遺伝子を組み込んで開発した薬剤「テロメスキャン」でがん細胞だけを光らせ、特殊なビデオスコープでリアルタイムに観察するシステムの確立に取り組んでいる。がんが広がった部位の特定やリンパ節への転移確認などに役立つ技術として注目を集めている。
 
 テロメスキャンは、がん細胞内で急速に増えるウイルス製剤「テロメライシン」の遺伝子配列に、蛍光に関わるGFP遺伝子を組み込んで開発した。

 内視鏡などで患部周辺にテロメスキャンを注入。数日後、特殊フィルターを備えた専用スコープで観察すれば、がん細胞が存在する部分だけが緑色に光って見える。手術中にも転移部分を含めてがんの広がりを正確に把握できる。

 胃がんや大腸がんなどの手術では再発を防ぐため、腫瘍部分だけでなく、その周辺や転移の可能性があるリンパ節など、正常部分も含めて切除している。今回のシステムが実用化されれば、切除を最小限に抑えられ、患者の身体的な負担が軽減できるという。

 マウス実験では、ヒトの大腸がん細胞を背部に植え付けた後、テロメスキャンを投与したところ、1日後からがん細胞が光るのを確認できた。現在、中大型の動物での実験に取り組んでいる。

 グループは2009年から3年間、国から1億3千万円の補助金を受けて研究。数年後にヒトでの臨床研究に着手する方針で、藤原教授は「テロメスキャンはがんを攻撃し、腫瘍の拡大を防ぐ能力もある。臨床応用に向け、研究を加速させたい」としている。

 GFPは08年にノーベル化学賞を受賞した下村脩・米ボストン大名誉教授らが1960年代に発見。がん研究などに不可欠となっている。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2012年09月13日 更新)

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