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骨様組織の作製法開発 岡山大大学院・松本教授グループ

松本卓也教授

 岡山大大学院医歯薬学総合研究科の松本卓也教授(生体材料学)らのグループは20日、マウスから採取した骨髄の間葉系幹細胞(MSC)を体外で塊にし、骨のような組織をつくり出す手法を開発したと発表した。がん治療などで取り除いたり、病気で失った骨の再生治療にかかる期間を短縮させることが期待できるという。

 現在、骨の再生治療はセラミック材料などを移植して骨の生成を待つが1〜3カ月かかり、患者のQOL(生活の質)向上には期間短縮が望ましい。このため松本教授は、体外で骨をある程度まで“成長”させて植える治療法を考案。2009年から研究を続けてきた。

 グループは室温が下がると体積が増える特殊なゲルに複数の穴(数ミリ程度)を作り、マウスのMSC50万個を投入。室温37度で12時間培養して細胞が凝固した後、20度まで下げるとゲルが膨張し塊を取り出すことができる。塊を体内で骨ができる際に起こる低酸素状態にすることで分化を促し、30〜50日間培養した。

 分析の結果、中心部では骨の主成分・リン酸カルシウムが沈着する石灰化が発生。その周囲を軟骨層が取り巻き、骨形成の初期段階を再現することができたという。

 組織内で起こる石灰化は、動脈硬化や尿路結石といった疾患の原因でもあり、病態の解明にも役立つという。成果は英科学誌電子版に掲載された。

 現在、骨様組織をマウスへ移植する研究を実施。松本教授は「将来的な再生医療への応用に向け、ヒト細胞での研究に移行したい」としている。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2012年09月21日 更新)

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