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がん細胞直接攻撃 川崎医大病院など年明け治験

 川崎医科大付属病院(倉敷市松島)や大阪大医学部付属病院(大阪府吹田市)など全国の6病院は、がんを守っている細胞を取り除いて直接攻撃し、免疫効果を高める新たな療法の臨床試験(治験)を2013年1月から始める。世界でも例のない取り組み。肺がんなど末期がん患者らを対象に、早期の臨床応用を目指す。

 最近の研究で、がん細胞の周囲に存在する「制御性T細胞」が、がんを攻撃する「キラーT細胞」をブロックすることが分かっている。一方、成人T細胞白血病(ATL)患者の治療薬として今春承認された新薬は、制御性T細胞を除去する性質を持っている。

 新たな療法は、この性質を応用。ATLの新薬によってがん細胞を防御する働きを無力化し、キラーT細胞の本来の働きを発揮させる。防御役の除去に着目した免疫療法は初めてという。

 治験代表者は愛知医科大の上田龍三教授。国から研究費が支給される14年度まで、肺がん、胃がん、食道がん、卵巣がん、悪性黒色腫の患者35人に行い、新療法の効果を探る。治験には、国立がん研究センター東病院(千葉県柏市)、名古屋市立大病院(名古屋市)なども参加する。

 川崎医科大付属病院では、呼吸器内科(岡三喜男教授)などが担当する。同意が得られた肺がん患者の静脈に新薬を週に1回、2カ月間にわたって計8回注射。採取した血液を川崎医療福祉大の中山睿一教授(がん免疫学)らが検査し、免疫反応の向上などを詳しく分析する。副作用なども調べる。

 中山教授は「末期のがん患者さんの希望となるよう研究を進めるとともに、ワクチン療法などとの併用療法も検討したい」としている。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2012年10月01日 更新)

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