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iPS細胞で肝炎研究 岡山大大学院・岩室客員研究員

岩室雅也客員研究員

 岡山大大学院医歯薬学総合研究科の岩室雅也客員研究員(消化器・肝臓内科学)は、肝臓病患者の血液から人工多能性幹細胞(iPS細胞)を作り、肝細胞に育てて肝炎などの発病メカニズム解明に応用する研究を来春から始める。2014年度末までに50人から提供を受けてデータを蓄積し、将来的には新薬開発につなげたいとしている。

 これまで肝疾患の研究には、患者から手術の際に少量の肝細胞を提供してもらっていたが、冷凍保存できないため約1週間しか使えなかった。一方、血液は採取が容易な上、冷凍保存もでき研究に十分な量の肝細胞が得られるメリットがあるという。

 患者の血液から抽出したリンパ球に複数の遺伝子を組み込んでiPS細胞を作製。さらに細胞を分化、増殖させる機能を持つ血液中の分泌液を加えて肝細胞を作る。

 研究対象の疾患は、肝細胞が自身の血液に免疫反応を起こす自己免疫性肝炎、ウイルス感染するC型肝炎など。自己免疫性肝炎では、肝細胞に患者の血液を加え、どのように炎症が起きているかを分子レベルで解析する。C型肝炎は細胞をウイルス感染させて炎症の度合いを調べ、発症しやすい細胞の特定など遺伝子構造を明らかにする。

 病気のシステムを解明することで、どういった人が発病しやすいか、どのような薬が効くかなどが分かるという。

 複数の分泌液の組み合わせで、出来上がる肝細胞の状態が異なるため、患者の肝細胞により近い状態の細胞を作ることが課題という。岩室客員研究員は「精度の高い細胞を作る技術を確立し、幅広い疾患の研究を進め、臨床に生かしたい」と話している。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2012年11月05日 更新)

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