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腫瘍増殖を大幅抑制 岡山大大学院教授ら マウス実験で確認

藤原俊義教授

大原利章医師

 岡山大大学院医歯薬学総合研究科の藤原俊義教授(消化器外科学)と大原利章医師(同)らのグループは、がんに栄養を送る血管新生を阻害する分子標的薬と、体内の鉄分を減らす療法の併用で腫瘍の増殖を大幅に抑えられることを、マウス実験で突き止めた。肺がんや大腸がんなど固形がん患者の治療効果を高める薬剤開発や新たな食事療法の確立につながるという。

 グループは鉄分が減ると、腫瘍増殖が抑えられるとする海外研究に着目。鉄が、がんの栄養になっているとの仮説を立て、2009年から実証を進めると同時に、分子標的薬との併用効果を探ってきた。

 背部に肺がんを植え付けたマウス16匹を、鉄分が含まれた餌で育てたA群と、鉄分を除去したB群に分け、42日間観察したところ、B群の腫瘍増殖はA群の半分以下に。さらに、A群と同じ餌で分子標的薬を投与したC群と、鉄を除き投薬もしたD群を比べた結果、約1カ月後のC群の腫瘍はB群の半分程度までしか拡大せず、D群はほとんど増殖していなかったという。

 鉄が不足すると、体の隅々まで酸素を運ぶヘモグロビン(Hb)が作られにくくなる。体内では生命を維持するため、少なくなったHbの働きを最大限に生かそうと血流を速めたり、新たな血管を作って血流を増やす。

 実験結果からグループは腫瘍も同様にHb減少を感知して血管を新たに作り栄養を“補給”するため、その血管新生を断ち切る分子標的薬との併用が、腫瘍増殖を大幅に抑えたと推測している。成果は近く米科学誌に掲載される。

 大原医師は「鉄分は生命維持に欠かせない。安全性の問題からヒトへの応用は簡単ではないが、どこまで減らすのが効果的かといった研究を進め、がん治療につなげたい」としている。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2012年11月21日 更新)

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