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特別料金徴収広がる 岡山県内大病院 夜間・休日軽症患者対象

川崎医科大付属病院小児救急外来で時間外選定療養費の説明を受ける母親。カウンターには徴収を知らせる看板が置かれている

 夜間や休日に救急外来を受診した軽症患者から通常の医療費に加え、特別料金(時間外選定療養費)を徴収する制度が、岡山県内の大規模病院で広がっている。安易に救急外来を利用する「コンビニ受診」の抑制に向けた取り組み。導入した病院では受診者数が減少し、本来の目的である重症者の治療体制確保につながっている。

 コンビニ受診は重症者を救う24時間体制の「救命救急センター」を中心とする救急病院に、軽症患者が診察時間外の夜間や休日に訪れること。「会社を休めない」「夜の方がすいている」など自己都合のケースも目立つという。

 県内のある大規模病院は数年前まで、救急搬送される重症者、軽症患者のほか、冬場にはインフルエンザ患者も加わって混雑。「当直医は仮眠はもちろん、休憩さえ取れない状況が続いていた」という。

専念

 こうした状況を受け制度を取り入れた主な病院は、岡山赤十字病院(岡山市北区)▽国立病院機構岡山医療センター(同)▽岡山大病院(同)▽川崎医科大付属病院(倉敷市)▽津山中央病院(津山市)=別表=など。厚生労働省に届け出れば導入でき、各病院が特別料金の徴収条件や金額を設定するため差はあるが、いずれも入院の必要がない軽症患者が対象。重症者の治療体制の確保に加え、医師の負担軽減も狙いだ。

 岡山赤十字病院は2008年冬、県内の救命救急センターとして初めて導入。6歳未満や紹介状持参者を除き、3150円の徴収を始めた。しかし、09年度の時間外受診者は約3万3千人と前年度より微増。徴収対象も5割を超えたため、導入から2年後に5250円へ“値上げ”した。11年には未徴収だった6歳未満も午後10時〜翌午前8時半は対象にした。

 その結果、12年度4〜9月の時間外受診者数は約1万2千人、徴収割合は30・7%まで減った。忠田正樹院長は「当直医の負担が軽くなり、重症者の治療に専念できる体制が整いつつある」とする。

余力なし

 最も重篤な患者を受け入れる高度救命救急センターの川崎医科大付属病院は11年冬から、午後10時〜翌午前8時半に来院した軽症の小児(中学生以下)患者から徴収を始めた。患者数は3割ほど減った。当直小児科医(新生児含む)は3人と他病院に比べ手厚いが、従来は多い月には900人超が受診し余力を失っていたという。

 09年に導入した津山中央病院の特別料金は3150円。最も低額だが効果は表れ、「1〜2割ほど受診者が減少した」(同病院)。岡山医療センターも3〜4割、軽症患者が減っている。

柔軟な対応

 「特別料金を取るなんて…。もうけることばっかり考えて」―。

 制度を導入した病院には、こんな苦情が寄せられることもあるという。だが、特別料金を徴収すると、深夜時間帯(午後10時〜翌午前6時)の緊急的な診療で受け取れる診療報酬は加算できない。「救急部門の収入は増えるどころか、むしろマイナスになることも。コンビニ受診が減れば診療環境が改善するため、取り入れている」と口をそろえる。

 さらに、各病院は重症者が来院をためらわないよう、徴収には医師の判断を加えるなど、柔軟な対応を取る。

 津山中央病院の森本直樹救命救急センター長は「まずは、かかりつけ医を日中に受診するのが基本。多くの重症者を救い、地域医療を守るためにも、適切な受診行動を取ってほしい」と呼び掛けている。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2012年12月06日 更新)

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