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大腸がん手術後のサーベイランス(経過観察) チクバ外科・胃腸科・肛門科病院 瀧上隆夫院長に聞く

チクバ外科・胃腸科・肛門科病院 瀧上隆夫院長

 再発調べる定期検査 術後3年間は厳重に

 大腸がん手術後のサーベイランス(経過観察)について、チクバ外科・胃腸科・肛門科病院(倉敷市林)の瀧上隆夫院長に聞いた。「大腸がんの再発は約80%が術後3年以内に見つかっています」と瀧上院長は話し、術後3年間の定期検査は特に厳重に行うことが大切と注意を促す。



 がんの中では予後(医学的な見通し)が比較的良いといわれる大腸がん。しかし手術で完全に切除できても、進行度(がんの広がり具合)が進むに従って再発率は高くなる。

 大腸癌研究会によると、がんが大腸壁の粘膜内にとどまる場合は完全切除で再発は起こらないが、粘膜下層まで浸潤すると再発率は約1%になる。固有筋層まで浸潤すれば同約6%、大腸壁の外まで広がったがん(ステージII)で同約13%、リンパ節転移がある場合(ステージIII)では同約30%と高い。

 再発の多い部位は、肝臓、肺、リンパ節、腹膜。直腸がんでは局所(がんがあった場所周辺)再発も起こる。「最近では大腸がんの再発で腹膜播種(はしゅ)(種がまかれるようにがんが転移する)がよくみられます」と瀧上院長。再発を早期に発見できれば、再度の手術で治ることもあり、手術ができない場合でも化学療法や放射線治療で延命を図れる。そのため、がん切除手術後の経過観察で定期検査を行うことが重要になる。

 に示したのは経過観察の一例。定期検査を受けるための通院期間は、術後5年間が原則だ。術後5年を超えての再発率は1%以下といわれる。

 腫瘍マーカーは正常細胞よりもがん細胞で多量に作られて血液中に放出される物質で、大腸がんでは「CEA」や「CA19―9」という腫瘍マーカーを測る。数値に異常が見つかれば、ブドウ糖に似た検査薬(FDG)を体内に注入してPET検査を行うこともある。骨盤CT(コンピューター断層撮影)検査は、直腸がんの骨盤内での再発を調べる。

 これまで約7万5千例の大腸内視鏡検査を行ってきた瀧上院長は「術前、腫瘍で腸管が閉塞(へいそく)し大腸深部まで診られない患者さんもいます。奥に別の腫瘍が潜んでいる可能性がある」と話す。このような場合、同病院では術後3カ月目に内視鏡検査で必ずチェックしている。

 また瀧上院長は問診の大切さを指摘する。患者と向き合い、よく世間話もするという。「がんを患ったことをマイナスとせず、人生の転機だとプラスに捉え、日々楽しく過ごしてもらえるように話すのです。心配ばかりでは免疫力も下がってしまうでしょうから」と語る。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2012年12月19日 更新)

タグ: がん

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