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糖尿病性腎症 進行遅く  岡山大大学院教授らマウスで確認

槇野博史教授 小川大輔准教授

 岡山大大学院医歯薬学総合研究科の槇野博史教授と小川大輔准教授らのグループは、ヒトの体内にあるタンパク質の一種「オステオポンチン」(OPN)の発生を抑えれば、糖尿病が進行して腎不全となる糖尿病性腎症の進行を遅らせることをマウス実験で確認した。有効な治療法がほとんどない同症を抑制する薬剤の開発につながる成果という。

 OPNは、骨や中枢神経など体内のさまざまな場所に存在し、細菌感染などで炎症が起こると、細菌を取り込んで無害化する白血球を呼び寄せるタンパク質。腫瘍部や腎障害が進んだ腎臓にも多くあり、疾患に関係していると考えられていた。

薬剤開発へ期待

 マウス24匹を使った実験で、正常群▽糖尿病性腎症を発症させた疾患群▽発症させた後、OPN発生を抑える特殊な化合物を口から投与した群―に分け、8週間後に同症の診断指標であるタンパク尿を分析。疾患群のタンパク尿濃度は正常群の約9倍なのに、投与群は5倍程度に抑えられていた。腎臓細胞の顕微鏡検査でも、投与群は疾患群に比べ、腎機能の低下が3割ほど軽減されていた。

 グループは、OPNが糖尿病性腎症を炎症と“勘違い”して負の作用を起こし、症状を進行させていると結論付けた。成果は米国腎臓学会誌に掲載された。

 小川准教授は「今回投与した化合物はヒト用薬剤への転用は難しいが、他の物質の探索やOPN作用経路の解明を続け、薬剤開発に結び付けたい」としている。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2012年12月21日 更新)

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