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鑑別診断で早期発見 認知症疾患医療センター開設1年余

地域包括支援センター職員と情報交換する認知症疾患医療センターの中島センター長(右から2人目)ら

 認知症対策として、岡山市が岡山赤十字病院(北区青江)を指定して専門機関「認知症疾患医療センター」を開設して1年余り。認知症かを見極める鑑別診断を398件(今年11月末現在)手掛け、早期発見や治療につなげている。開設効果を高めるためには、認知症患者を開業医や介護関係者とともに支える態勢づくりの強化が課題だ。

 岡山ふれあいセンター(中区桑野)で11月中旬、医療センターの医師や高齢者に関わる相談に応じる市地域包括支援センターのスタッフら7人がテーブルを囲んだ。

 認知症が疑われる男性への対応を話し合ううち、家族やかかりつけ医、民生委員らを交えた「ケア会議」を開くことを決定。医療と介護関係者の連携による支援態勢が動きだした。

 スタッフ4人

 岡山赤十字病院は認知症対策で自治体担当者らに助言などをしてきた経験があり、昨年10月に市から認知症疾患医療センターの指定を受けた。

 スタッフは精神科医と臨床心理士、精神保健福祉士の計4人。鑑別診断▽患者や家族からの相談対応▽介護分野との連携―が業務の柱だ。

 鑑別診断は、患者や家族の依頼と開業医からの紹介を基に実施。MRI(磁気共鳴画像装置)といった画像検査や脳の血流検査などを駆使し、類似症状が多く診断が難しい認知症かを判断。開業医や岡山赤十字病院での治療に結び付けている。

 相談は11月末現在で261件。「物忘れ、徘徊(はいかい)にどう対処すべきか」といった介護の悩みが目立っている。

 介護分野との連携では、地域包括支援センターに医療センターとの連携担当者1人を配置。今年4~11月、支援センターから医療センターに33件の相談があった。

 連携担当者の角野三四郎さんは「かかりつけ医がいなかったり、いても専門外といった場合の相談先が明確になった」と話す。両センターの連携により、物忘れで金銭管理が難しい80代女性が鑑別診断を受け認知症とされ、成年後見制度を活用できる条件を満たした例があった。

 症状把握1.9万人

 日常生活に支障を来す認知症の症状がある高齢者は把握分だけで市内1万9240人(4月現在)。ただ、本来は必要でも受診に至っていない高齢者は多いとみられる。

 角野さんが昨年12月、支援センター職員約130人に行ったアンケートでは、医療センターに対し、同センター医師の往診やかかりつけ医との連携を求める声が多かった。

 医療センターは6月から、支援センターの社会福祉士やケアマネジャーらの情報を基に、地域の潜在的な患者を把握する活動をスタート。毎月、認知症相談会でふれあいセンターなどを訪れた際、支援センター職員から悩みを聞き、対応を助言している。

 中島誠センター長(精神科医)は「地域包括支援センターと開業医をつなぎ、医療センターが専門的立場から支援する態勢を築き、市全体の認知症患者の支援底上げにつなげたい」としている。

 センターへの相談は専用電話(086-222-8843)。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2012年12月22日 更新)

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