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(1)COVID―19 倉敷中央病院副院長兼呼吸器内科主任部長 石田 直

石田 直氏

 COVID―19とは、SARS―CoV―2という新しいウイルスによる新型コロナウイルス感染症の略称であり、2019年12月に中国の武漢で発生し、その後急速に全世界に広がり、パンデミックを引き起こしました。このウイルスの特徴は、非常に短期間で変異を繰り返すことであり、臨床像がどんどん変容しています。

 わが国でも、23年5月現在で計8回の流行の波を経験しましたが、今後も流行を繰り返し、年末には大きな波が来ることも予想されています。

 COVID―19は、全く無症状の人から、軽度の感冒様症状にとどまる場合や、肺炎を起こして呼吸困難を生じる人など、大変幅広い臨床症状を呈します。高齢者や基礎疾患を持つ人では、細菌による肺炎を合併することもあり、軽症化したといわれるオミクロン株においても、死亡率はインフルエンザより高いといわれています。

 また、若年者や軽症であっても、回復後長期にわたって、倦怠(けんたい)感、息切れ、嗅覚味覚障害、脱毛、うつ状態、頭がぼんやりする、集中力低下などの後遺症が持続することが知られています。

 現在、いろいろな治療薬が開発されており、一般に、中等症までは抗ウイルス薬が、中等症から重症例では免疫抑制・調節薬が使用されます。酸素が足りない場合は、酸素吸入や人工呼吸器の使用も検討されます。年齢、基礎疾患、重症度に応じて治療の選択を行うことになります。

 ワクチンは、発症予防および重症化防止に有効であり、米国疾病対策センター(CDC)からの報告によると、ワクチンを打たなかった人に比べ、ワクチンを打った人や新しいワクチンを追加で打った人ほど、死亡率が低下したことが示されています。新しい変異ウイルスにはワクチンの効果が減弱するといわれていますが、発症しても重症を防ぐことには一定の効果が期待されますので、高齢の方や基礎疾患を有する人は、ワクチン接種を受けていただきたいと思います。

 5月よりCOVID―19は、5類感染症になり規制が緩和されましたが、マスク着用や手洗い、3密防止等の感染対策は依然有効ですので、引き続き心がけていただければと思います。

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 倉敷中央病院(086―422―0210)

 いしだ・ただし 京都教育大学附属高校、京都大学医学部卒。京都大学胸部疾患研究所附属病院、国立姫路病院を経て、1988年から倉敷中央病院勤務、2000年から呼吸器主任部長、20年から副院長兼務。京都大学臨床教授。日本内科学会専門医、日本呼吸器学会専門医、日本感染症学会専門医。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2023年06月05日 更新)

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