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細胞死関わる遺伝子を特定 パン酵母内115種 がん原因解明に光

守屋央朗特任准教授

 岡山大異分野融合先端研究コアの守屋央朗特任准教授(システム生物学)らのグループは、パン酵母が持つ約5800の全遺伝子を独自手法で人工的に増やし、細胞死に大きく関わる115種類を特定した。遺伝子の異常増幅で発症するがんやダウン症の病態解明につながる成果として、28日付の米科学誌電子版に掲載された。

 守屋特任准教授は2006年、調べたい遺伝子とアミノ酸を作る遺伝子などを組み合わせた特殊なDNAを細胞内に入れることで、その遺伝子を次々コピーさせ、細胞に与える影響を測定する実験法を開発。今回は細胞の構造がヒトに近いパン酵母の遺伝子で行った。

 東北大の牧野能士助教の協力で解析した結果、10倍以下の増幅でも細胞機能を破たんさせてしまう遺伝子115種類を特定。細胞内でタンパク質の輸送や細胞の形成に関わるタンパク質をつくる遺伝子が多かったという。一方、80%以上の遺伝子は100倍以上増幅されても悪影響を与えず、細胞に一定の抵抗力があることも判明した。

 ダウン症やがんは遺伝子が異常に増え、発症原因になることが知られている。今後はヒトの細胞で同様の実験を行い、少しの増幅で正常細胞を壊し、がん化させる遺伝子の特定などを続ける。

 守屋特任准教授は「今回の遺伝子がどのように働き、細胞機能を破たんさせるのかというメカニズムも解明したい」としている。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2012年12月29日 更新)

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