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尿路結石原因 分解細菌が効率吸収 岡山大・山下教授ら解明

山下敦子教授

 激痛を引き起こす尿路結石で岡山大の山下敦子教授(構造生物学)らの研究グループは、原因物質のシュウ酸を腸内に存在する分解細菌が効率よく吸収するメカニズムを突き止めた。シュウ酸の分子サイズや電気量で他の物質と選別しているという。

 シュウ酸は食物に含まれ、多くは尿や便を通じ体外に排出される。腸内の分解細菌に吸収されるのは一部というが、米国などでは分解細菌の経口摂取を通じた予防法が研究されている。

 グループは、分解細菌の表面付近(細胞膜)に存在するタンパク質OxlTに着目。シュウ酸吸収との関係は知られていたが詳しい仕組みは不明で、手がかりとなる分子構造を大型放射光施設スプリング8(兵庫県佐用町)で解明した。

 分解細菌の内部と腸管側を結ぶ“通り道”があり、内径はシュウ酸が通過できるだけの狭さだったほか、両端は扉状だった。腸管側はシュウ酸を引き寄せやすい電気量で、通り道に入ると腸管側の扉が閉じた後に反対側が開き、分解細菌の内部に取り込まれていた。

 山下教授は「シュウ酸を巡り腸内で起きている反応の一端が見えてきた。今回の研究が、苦痛に遭わずに済む効果的な予防法の開発につながるのを期待したい」としている。

 研究成果は英科学誌ネイチャーコミュニケーションズに4月、掲載された。

 尿路結石 腎臓から尿管までの間にできた石が激痛のもと。生涯で男性の7人に1人が、女性の15人に1人が経験するとされる。主な原因物質はシュウ酸でホウレンソウやコーヒーなどに比較的多く、尿中で濃度が高まるとカルシウムと結合して石になる。治療では、石を流し出すために排尿を促したり体外からの衝撃波で破砕したりしている。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2023年06月13日 更新)

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