文字 

(1)肺がんの予防、発見、診断~なにより早期発見が大切です! 岡山赤十字病院呼吸器内科副部長 細川忍

細川忍氏

 がんの罹患(りかん)数は年々増加しており、日本では2人に1人はがんにかかり、男性で4人に1人、女性で6人に1人はがんで死亡する時代です。その中でも肺がんは男性で第1位、女性で第2位の死亡数であり、中高年の人にとって予防と早期発見は非常に重要です。

 肺がんは気管支や肺胞の細胞ががん化したものです。喫煙者は非喫煙者と比べて男性で4・4倍、女性で2・8倍も肺がんになりやすく、受動喫煙も肺がんになる危険性を2~3割も高めるといわれます。自身・周囲の人のために禁煙は大切な予防法です。

 アスベストの長期間の暴露、肺結核、慢性閉塞性肺疾患、間質性肺炎も肺がん発生の危険性を高めると報告されています。また肺がんではがん発生に直接的な役割を果たすドライバー遺伝子の異常による発がんも複数知られており、危険因子がない人も発がんの可能性があります。

 肺がんの発見経緯はがん検診・健康診断・人間ドックがわずか約16%で、肺がん検診の受診率はまだ約50%程度にとどまっています。コロナ禍で肺がん検診の受診率が最大で30%も低下し、徐々に戻ってきていますが、さらなる受診率向上が期待されます。

 肺がんによっておこる症状にはせき、たん、血たん、息苦しさ、胸痛などがありますが、症状が出てからでは肺がんはすでに進行していることが多いです。すべての対象者に胸部レントゲンによる肺がん検診を、そして重喫煙者(1日に吸うたばこの本数×喫煙年数が600以上の人)には低線量胸部CTを併用した肺がん検診が推奨されており、検診を受けて無症状のうちに早期発見をすることが大切です。

 肺がんが疑われてまず行うのは胸部レントゲン・胸部CTの画像検査です。画像で肺がんが強く疑われる場合は組織を採取し確定診断を行います。まず気管支鏡検査を検討しますが、それでは組織採取が難しい場合は他の方法で組織採取を試みます。

 肺がんと診断された場合は、最適な治療の選択のために肺がんの病変の広がりを調べる必要があり、これを病期診断といいます。具体的には原発巣の大きさや周囲臓器への浸潤の有無、所属リンパ節転移の有無、遠隔臓器への転移の有無を胸腹部造影CT、頭部造影MRI、PET―CTなどで調べます。

 組織採取で得られた肺がんの組織型と病期診断、病期によってはがんの遺伝子異常の有無など、さらに併存疾患や年齢、全身状態をもとに治療を決定します。

 治療には、手術療法、放射線療法、薬物療法があり、単独もしくは組み合わせて治療を行います。新規治療薬の開発、最適な治療の組み合わせ、支持療法の進歩で、肺がんの治療はまだまだ進歩し、その治療成績は改善してきています。

     ◇

 岡山赤十字病院(086―222―8811)

 ほそかわ・しのぶ 岡山大学医学部卒。金田病院、岡山医療センター、岡山大学病院などを経て2005年4月から岡山赤十字病院勤務。日本内科学会総合内科専門医・認定医、日本呼吸器学会専門医・指導医、日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医、日本呼吸器内視鏡学会専門医・指導医。医学博士。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2023年07月03日 更新)

ページトップへ

ページトップへ