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「冬虫夏草」で健康食品 カイタックと岡山大が共同研究

阪口政清准教授

人工栽培された冬虫夏草。茶色の塊が蚕のサナギ、角のように伸びたオレンジ色がキノコのかさや柄に当たる

 古来、滋養強壮などの漢方薬として珍重されてきた「冬虫夏草」。虫に寄生し成長する不思議な菌類(キノコの一種)だ。繊維製品総合卸のカイタック(岡山市北区昭和町)は希少な冬虫夏草に着目。異業種ながら健康食品としての事業展開を本格化させ、岡山大と共同で抗がん作用などの効能の研究にも乗り出した。

 カイタックが手掛ける冬虫夏草の健康食品は、人工栽培したキノコ「サナギタケ」を原料に用いる。

 京都工芸繊維大(京都市)の松原藤好名誉教授などのチームが開発した「無菌養蚕システム」を応用し、ウイズラブ・日本シルクバイオ研究所(神戸市)で栽培。無菌状態にした環境下で、生きた蚕のサナギに天然の冬虫夏草と同族の菌を植え付け、2カ月ほどかけて育てる。サナギ1匹から採れる量は約0・2グラムという。

 カイタックは、量産化が困難とされてきた冬虫夏草の安定栽培に世界に先駆け成功した技術の将来性を見込み、同研究所に出資。2009年には社内にヘルスケア課(現ヘルスケア事業部)を設立し、病院(自由診療)や薬局向けに卸販売を行ってきた。口コミで評判が広がり、昨年11月からインターネットでの一般販売を開始。冬虫夏草の粉末をカプセルに入れた商品で、1瓶(90粒)1万7千円。将来的には1万人の利用を目指す。

 冬虫夏草の可能性を広げるため昨夏、岡山大大学院医歯薬学総合研究科の阪口政清准教授(細胞生物学)との共同研究に着手。阪口准教授によると、これまでの初期実験で、さまざまながんに対する抗腫瘍効果をうかがわせる結果が得られた。今夏までにマウスを使った実験などで、有効成分と抗腫瘍作用のメカニズムを分子レベルで解析しデータを蓄積。がん治療薬などへの応用可能性を探っていく。

 サナギタケの冬虫夏草はこれまで多くの研究で、免疫力の向上や抗炎症作用といった効果、効能があるとされてきたが、分子レベルでの詳細な機能は解明されていないという。

 阪口准教授は「希少で入手困難だった冬虫夏草が安定供給されるメリットは研究面でも大きい。将来的にはがん治療薬の実用化につなげたい」とし、カイタックの貝畑雅二社長は「健康に貢献できる事業であり成長分野と考えている。自社で栽培施設を設けることも検討していく」と話している。


 冬虫夏草 日本では昆虫に寄生し、それを栄養に生育したキノコの総称。冬場に幼虫に寄生し、夏になると草のようにキノコが生える不思議な形態が名前の由来といわれる。中国では滋養強壮の秘薬とされてきたが、乱獲で絶滅が危惧されている。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2013年01月15日 更新)

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