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口腔粘膜炎 痛み原因の歯に保護材 岡山大准教授開発 保険適用目指す

大森一弘准教授

 岡山大学術研究院医歯薬学域の大森一弘准教授(歯周病学)らの研究グループは、がんの化学療法や放射線治療の副作用で口腔(こうくう)粘膜炎を発症した患者の歯に装着する保護材を開発した。歯が患部に接触して激しい痛みを引き起こすことから、生活の質(QOL)向上を目指す試み。既に臨床研究を同大病院で始めており、3年後の公的医療保険の適用を目指している。

 口腔粘膜炎は、唇や舌などに炎症が起き、加齢によってすり減ったり、虫歯で欠けたりした歯が当たることで激しい痛みを伴うため食事や会話が難しくなることも多い。化学療法を受けたがん患者の4割が発症するという。現在は薬の塗布など炎症部分に対する治療が行われているが、大森准教授らは痛みを誘因する歯に対するアプローチに着目し、2014年から開発を始めた。

 保護材は「ソフトプロテクターCPC」。主にレジン(樹脂)を使用し、粘土状で扱いやすく、光を当てるとゴムのような硬さで固まる。歯を覆った後に削って調整する必要がないため、処置する箇所を問わない。市販の歯磨き粉などにも使われている殺菌剤「塩化セチルピリジニウム(CPC)」を含んでおり、保護材の表面で細菌増殖を防ぐ効果もあるという。

 19年に特許を取得し、今年5月に医療機器として承認された。大森准教授は「がん患者の増加に加え、自身の歯を残せる高齢者が増えており、保護材の需要は高まるとみられる。既存の治療法と併せることで、がん患者のQOL向上に寄与したい」としている。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2023年09月03日 更新)

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