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患者が匿名交流へ メタバース構築 長谷井岡山大准教授、近く運用へ

仮想空間でアバターの動作をチェックする長谷井准教授

 岡山大学術研究院医歯薬学域の長谷井嬢准教授(整形外科)は、インターネット上の仮想空間「メタバース」を活用し、患者らが匿名で交流できる場を構築した。当面は、小児や若年層が発症しやすい希少がん「悪性骨腫瘍」の患者や家族同士の情報交換を目的とした交流を想定。現在、全国の病院とルールづくりなどを進めており、近く運用を開始する。

 岡山大病院(岡山市)で10年以上、悪性骨腫瘍の患者を診てきた長谷井准教授は、患者のメンタルケアのため、2019年からメタバースによる交流の場づくりに着手。希少がんの患者は、同じ疾患の経験者と情報交換や気持ちを共有する機会が少なく、孤独や不安を感じやすいという。

 交流の場は6月に完成。長期入院を余儀なくされる患者に少しでも自然を感じてもらおうと海辺をイメージし、ヤシの木やパラソル、海の家などを配した。自身で顔や髪型、服を選んだアバター(分身)を座らせたり歩かせたりしながら会話ができる。

 現在は連携する他地域の基幹病院を通じて全国の患者や家族に参加希望を募っており、誹謗(ひぼう)中傷などに関する運用ルールを整備した上で本格始動する。闘病経験者による講演会や、抗がん剤の生殖機能への影響といったデリケートな質問を医療者が受ける場としても活用していく方針。

 長谷井准教授は「病室などから仮想空間に入れ、名前も顔も明かさなくていいので参加のハードルは低い。互いに励まし合うことで精神的負担を減らし、治療に前向きになってもらえれば」としている。 
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2023年09月05日 更新)

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