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パルスメーター1185台未返却 県など、コロナ自宅療養者に貸与

岡山県などが新型コロナウイルスの自宅療養者に無料で貸し出したパルスオキシメーター

 新型コロナウイルス感染者の体調把握に用いられる小型医療機器「パルスオキシメーター」について、岡山県と岡山、倉敷市が自宅療養者に無料で貸し出していた計1185台が返却されていないことが14日、県と両市への取材で分かった。5月の5類移行に伴って貸与事業は終了したが、未返却率は9・6%、購入価格に換算すると計約1千万円に相当する。県は高齢者施設への譲渡や新たな感染症の流行時に活用するためとして、速やかな返却を求めている。

 パルスオキシメーターは保健所を設置する都道府県や市を対象に、国が新型コロナ緊急包括支援交付金として購入費を支給。岡山県では県と岡山、倉敷市が2020~21年に順次事業を開始し、保健所が必要と判断した高齢者や基礎疾患のある感染者らに無料で貸し出していた。

 岡山県と両市によると、機器の確保数は県が6480台、岡山市が2206台、倉敷市が3680台の計1万2366台。13日現在、このうち県465台、岡山市393台、倉敷市327台がそれぞれ返却されておらず、確保数に占める割合は17・8~7・2%に上っている。

 県などは貸し出しに際し、療養後の速やかな返却を文書や電話で通知し、返却されない場合は督促を行っている。だが、利用者からは「紛失した」「返したはず」「捨ててしまった」といった理由で返ってこないケースが多く、督促を重ねるうちに連絡がつかなくなった人もいるという。

 県と岡山市では現在も電話による督促を継続しているが、倉敷市は職員の負担を考慮して6月ごろから未返却者への連絡を見合わせている。

 厚生労働省によると、パルスオキシメーターの未返却は全国で多発しており、今後、詳細な実態把握を検討したいとしている。県保健医療部は「患者が自宅で手軽に症状を把握できる有用な機器。税金で賄われた公共の財産であり、最大限活用するためにも早期に返却してほしい」としている。

 パルスオキシメーター 指先に装着し、光センサーで血液の色合いから血中酸素濃度を測定する機器。血中酸素濃度は96%以上で異常なし、もしくは軽症、96%未満~93%超は中等症、93%以下は呼吸不全に陥っている可能性があると分類される。耐用年数は2~5年程度。

 ここポイント! 「新型コロナウイルス感染者の健康観察、入院の調整…。当時は業務が逼迫(ひっぱく)し、未返却の対応どころではなかった」と岡山県内自治体のある担当者が言う。パルスオキシメーターの貸し出しは感染急拡大に伴う緊急事業であり、未返却の多発まで想定した制度設計を求めるのは酷な面もある。とはいえ、原資が税金である以上、再利用などを含めた最大限の投資効果を担保するのは行政の責務だ。緊急事態であってもモラルハザード(倫理観の欠如)を生じさせない仕組みを整えておきたい。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2023年09月15日 更新)

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